2020 Fiscal Year Annual Research Report
プルキンエ細胞と登上線維のタイムラプス観察によるシナプス刈り込み機構の解明
Project/Area Number |
20J21223
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
越膳 真弓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | シナプス刈り込み / 小脳 / プルキンエ細胞 / 登上線維 / 二光子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は以下の①②の二つのテーマから成り立っている。 ①登上線維の形態の経時的変化をタイムラプス観察する:登上線維がGFPとRFPで染め分けられた幼若マウスにおいて、複数の登上線維の形態変化をタイムラプス観察することで、シナプス刈り込みの末に残る「勝者」の登上線維の形態学的特徴を明らかにすることを目的とした研究である。現在までに登上線維にGFPとRFPという二種の蛍光色素を発現するマウスの作成に成功している。このマウスを二光子顕微鏡で観察したところ、プルキンエ細胞に競合して入力する登上線維がRFP、GFP、RFP+GFPの三色で染め分けられていて、それぞれの形態の観察が可能であった。今年度はこのマウスにタイムラプス観察のための頭蓋窓作成手術を行い、生後10日から20日まで登上線維の形態を2日おきに観察し記録することを目標とする。 ②登上線維とプルキンエ細胞の神経活動をin vivoカルシウムイメージングで同時観察する:プルキンエ細胞と登上線維の神経活動を経時的に追跡し、それらの同期性を解析することで、どのような活動性をもつ登上線維が「勝者」となるか解明することを目的とした研究である。これまでに緑色のカルシウムインジケーターを小脳プルキンエ細胞に発現させたマウスの延髄に、赤色のカルシウムインジケーターのcDNAを持つレンチウイルスを注入することによって、登上線維に赤色のカルシウムインジケーターを発現させることを試みた。しかしこれが技術的な問題で成功しなかったことから、今後は遺伝子改変によって緑色のカルシウムインジケーターを登上線維に発現させ、小脳へのレンチウイルス注入によって赤色のカルシウムインジケーターをプルキンエ細胞に発現させる計画へと変更を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、年度初めよりCOVID-19の感染拡大に伴う研究活動の制限があり、当研究課題も約2か月にわたる実験の停止を余儀なくされた。それにも関わらず、本研究の二つの軸のうちの一つである「①登上線維の形態の経時的変化のタイムラプス観察」については当初の年次計画通りの進捗があった。「②登上線維とプルキンエ細胞の神経活動のin vivoカルシウムイメージング」については、遺伝子改変マウスの作成に時間を要しているため、年次計画より遅れた進捗となっている。 学会の中止や延期も相次いだため、本年度における研究の中途報告の機会を得ることは叶わなかったが、来年度以降には積極的に発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①登上線維の形態の経時的変化をタイムラプス観察する:昨年度には登上線維にGFPとRFPを発現するマウスの作成に成功した。TdTomato flox/floxマウスと、Nefl-EGFPとmRch1-iCreマウスとのかけ合わせにより産まれたNefl-EGFP(+)TdTomato(+)mRch1-iCre(+)マウスでは、多数の登上線維がGFPを発現する一方で、ごく少数の登上線維がRFPを発現した。このマウスを観察したところ、プルキンエ細胞に競合して入力する登上線維 がRFP、GFP、RFP+GFPの三色で染め分けられていた。今年度はこのマウスにタイムラプス観察のための頭蓋窓作成手術を行い、生後10日から20日まで登上線維の形態を2日おきに観察し記録することを目標とする。 ②登上線維とプルキンエ細胞の神経活動をin vivoカルシウムイメージングで同時観察する:当初の計画では子宮内電気穿孔法によってプルキンエ細胞に赤色のGECIであるXCaMP-Rを、レンチウイルス注入によって登上線維に緑色のVECIであるjGCaMP7fを発現させたマウスを用いる予定としていたが、技術的に困難であった。そのため、遺伝子改変によりGCamp6fを登上線維に発現させ、レンチウイルス注入によってXCaMP-Rをプルキンエ細胞に発現させたマウスを作成する方針へ変更した。具体的にはCre依存的にGamp6fを発現するマウスを、登上線維にCreを発現するmRch-iCreマウスと掛け合わせることによって、登上線維に緑色のGECIを発現するマウスを得る。生後0-2日のこのマウスの小脳にレンチウイルスベクターを注入することで、赤色のGECIであるXCaMP-Rをプルキンエ細胞に発現させる計画である。
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