2022 Fiscal Year Annual Research Report
マルチマテリアル積層造形法による3次元物性カスタム化技術の確立と顎義歯への応用
Project/Area Number |
21J40155
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Research Fellow |
加嶋 祐佳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2025-03-31
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Keywords | 3Dプリンター / 積層造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチマテリアル積層造形技術を用い、患者個々の口腔内環境に応じた複数の材質およびそれぞれの使用領域の選択をした上で顎義歯の一体化造形を行うことで、製作過程の簡便化および高精度・高機能化を実現した顎義歯の製作手法を確立することを目的として、今年度は異種材料境界部の評価を行った。顎義歯の義歯部構成要素である人工歯と義歯床は求められる物性や色調が異なるため、性質の大きく異なる材料を用いることになり、境界部での破壊が起きやすいことが予測される。そこで、人工歯と義歯床境界部の接着強度をせん断試験により評価した。また、試料はせん断試験前にサーマルサイクルを行い、その影響を調べた。サーマルサイクルは、10000サイクル行い、5℃と55℃の温度を30分間隔で繰り返す条件とした。せん断試験後、破断面をSEMにて組織観察を行い、破断形態を界面破壊、凝集破壊、混合破壊に分けた。接着強度はマルチマテリアル積層造形体の方が既存の手法を用いて製作した試料より有意に高くなった。また、マルチマテリアル積層造形体では凝集破壊が起こりやすい傾向にあることが分かった。一方既存手法で製作した試料は全て混合破壊であった。以上の結果から、マルチマテリアル積層造形を行い製作した義歯人工歯部と義歯床部は、既存方法と比較しても優れた接着強度を有していると言える。今後、マルチマテリアル積層造形体の吸水性や適合精度の検証を引き続き行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はサーマルサイクルを行った上での義歯人工歯部と義歯床部の接着強度の評価を行うことができ、マルチマテリアル積層造形体は既存手法と比較して有意に優れた接着強度を有していることが分かったため。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチマテリアル積層造形体は既存手法と比較して十分な接着強度を有していることから、今後吸水性や着色試験等さらに細かな物性の評価を行っていく予定である。さらに、マルチマテリアル造形により臨床に即した顎義歯形態での造形を試みる。これまでに得られた知見を元に、上顎無歯顎患者を想定し、顎義歯全構成要素を専用ソフトウェア(Magics)にてデジタル設計し、3Dプリンターで造形を行う。続いて、完成した顎義歯を3Dスキャニングし、設計時のデータと最適重ね合わせによる評価で精度検証を行う。部位や方向による寸法変化の傾向を精査し、寸法変化が大きい場合は顎義歯配置方向とパラメーター調整により修正する予定である。
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