2023 Fiscal Year Research-status Report
フェロセンの環回転を利用した新規生体機能性分子の創製
Project/Area Number |
22KJ1209
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
落合 幸太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | フェロセン / 三次元構築プラットフォーム / アンドロゲン受容体 / プロゲステロン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェロセンを三次元構築のプラットフォーム分子として用いることで、生体内においてより効率的にタンパク質との相互作用が可能なリガンドを創製した。具体的には、核内受容体の一種であるアンドロゲン受容体(AR)およびプロゲステロン受容体(PR)を標的とした。これらの受容体は、リガンド結合ドメイン(LDB)の相同性が非常に高く、二つの受容体間での交差活性がよく報告されている。本研究では、受容体との相互作用に必要なファーマコフォアをフェロセンを中心に三次元的に配置することで、相同性が高い受容体に関しても選択性を示した。 昨年度までに、1つまたは2つのファーマコフォアをフェロセン上に配置したフェロセン誘導体を設計し、ARおよびPRに対する構造活性相関を明らかにした。 本年度は、これらの情報を基にさらに拡張することで、三置換フェロセン誘導体を設計し、合成した。これらの化合物は高いPR選択を示した。また、三次元性分子であるフェロセンは面不斉が存在するため数多くのエナンチオマーが存在する。今回、これらのエナンチオマーを光学分割することで、さらにPR選択性が向上したフェロセン誘導体を見出した。 一方で、昨年度までの構造活性相関ではARにおいて高いリガンド活性を示すものは見られなかった。そこで、1,1'-二置換体に着目すると、フェロセンの環回転がARとの相互作用において不利に働いている可能性が考えられた。そこで、上下のCp環をリンカーで繋いだansa-フェロセン構造に着目し、それらの誘導体を設計合成した。これらの化合物は非常に高いARアンタゴニスト活性を示した。 このように本年度は、構造多様性や面不斉、環回転といった三次元分子であるフェロセンの特徴にフォーカスすることで、目的に応じた生物活性化合物を創製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受容体選択性を出すのが難しいARおよびPRを標的とし、フェロセンが高い選択性と生物活性を有することを示せたため、フェロセンを三次元構築のプラットフォームとして用いる有用性を示せたと考える。現在、これらの論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質とフェロセンの相互作用をより視覚的に調査するため、リガンド活性を有するものに対してタンパク質との共結晶構造を取得する予定である。
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