2023 Fiscal Year Annual Research Report
外来種との種間相互作用がもたらす新しい異型花柱性崩壊プロセスの解明
Project/Area Number |
22KJ1224
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
星野 佑介 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 繁殖干渉 / 雌雄離熟 / 外来種 / 雑種形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近縁外来種からの繁殖干渉が,在来種の花の多型の維持・消失や自家受粉による繁殖の進化におよぼす影響を明らかにすることを目的とした。カタ バミは国内では雌しべ長が異なる2タイプの花型が存在し(等花柱型と長花柱型),また,平野部では等花柱型と近縁外来種のオッタチカタバミが同所的に生育す る。これまでの研究から,等花柱型は,在来・外来の混合花粉を受粉しても同種交配が阻害されにくく,外来種からの繁殖干渉を回避できると考えられる。一 方,長花柱型は平野部に見られず,外来種からの繁殖干渉を強く受けている可能性がある。この仮説を検証するため,(1)野外では,長花柱型と外来種が同所的 に生育,繁殖するのか,(2)長花柱型は等花柱型よりも雑種形成しやすいか,(3)長花柱型では同種交配が阻害されやすいかを調査した。 (1)カタバミと外来種の開花フェノロジーを調査したところ,カタバミの花型と外来種の分布との間に関連は見られなかった。 (2)カタバミに外来種の花粉を受粉させる種間交配を行ったところ,長花柱型は等花柱型よりも形成する雑種種子数が少なかった。また,種間交配時の花粉管伸長の動態を観察したところ,カタバミの雌しべが長いほど,花粉管が胚珠まで到達する割合が低下した。 (3)カタバミに混合花粉(カタバミ+外来種)を受粉させ,形成した種子のうち同種種子の割合を測定したところ,カタバミの雌しべ長と同種種子の割合との間に関連はほとんどなかった。 以上より,外来種からの繁殖干渉はカタバミの形態変異をもたらすほどの強い選択圧にはならないものと考えられる。しかし,長花柱型では長い雌しべが外来種の花粉管が胚珠に到達することを妨げ,雑種形成しにくい可能性が示唆された。
|