2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the effects of changes in the pup - mother environment on gut microbiota formation and myelination development
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21J20080
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
神邉 淳 東京農工大学, 大学院農学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 腸脳相関 / 腸内細菌叢 / 髄鞘 / メタボロミクス / 脳発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類は母乳で仔を育てるという戦略を選択してきたため、他の生物に比べ親と仔の繋がりが強く、仔の発達において哺乳養育環境の影響が大きい。加えて、我々生物は無数の腸管内バクテリアと共に進化してきたため、哺乳養育環境の影響が強いことは仔の発達だけでなく、腸内細菌叢に対しても影響を及ぼしたことが示唆される。本研究は哺乳養育環境の変化が仔の腸内細菌叢形成、脳発達にどのように影響したかを明らかにすることで、哺乳類が独自にもつ効率的な発達様式を明らかにすることを目的とする。 哺乳養育環境の一つである母乳と, 子の腸内細菌叢形成・脳発達, 更には母乳による腸内細菌叢形成が脳発達に与える影響についても着目し, 研究を実施してきた。令和3年度については生後10日目の仔マウスにおいて母乳成分の違いが海馬の髄鞘形成に関与するMbp, Plp1遺伝子の発現を低下させたことがわかった。更にはその個体からの糞便を移植された無菌マウスにおいてもMbp, Plp1遺伝子の発現が低下していた。糞便移植後の無菌マウスから採取した糞便を用いた腸内細菌叢の機能解析, 代謝産物の解析を実施することで, 母乳中成分の変化によって腸内細菌叢が産生する代謝産物に変動がおきることを見出した。さらにこれら変動がみられた代謝産物から髄鞘形成に関与しうる代謝産物を乳仔期マウスに投与することで発見した。加えて, この代謝産物を培養オリゴデンドロサイトに処理することで, Mbp, Plp1といった遺伝子発現を抑制させることを見出した。これらの結果から、母乳―腸内細菌叢形成―脳発達の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母乳と仔の腸内細菌叢形成、脳発達、またそれらを繋ぐ要因の探索を行い、明らかにするために研究を行った。その結果、母乳成分は腸内細菌形成に重要であり、母乳成分の違いにより変化した腸内細菌叢が脳発達、特に髄鞘の発達に影響を与えることがわかり、母乳―腸内細菌叢形成―脳発達という哺乳類独自の発達システムの存在が示唆された。 次年度以降は、母乳だけでなく母親の育児の影響を考慮した実験を実施することで、母乳―腸内細菌叢形成―脳発達を拡張し、哺乳養育環境―腸内細菌叢形成―脳発達の証明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には前年度に引き続き解析を実施する。 これまでは、哺乳養育環境の一つである母乳と仔の腸内細菌叢形成、脳発達の関係性に着目し研究を行ってきた。こちらの研究に関しては、当初の予定通り早期離乳や母子分離といった育児の変化が仔の腸内細菌叢形成や脳発達にどういった影響をおよぼすかについて研究を行っていく。また、これまでの研究では髄鞘や髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトへの影響に着目し研究を行ってきたが、最終的に行動がどのように変化しているかは確認していない。そこで、母乳や育児の変化が乳仔期や成熟後の行動にどのような影響を与えるかについても解析する。
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