2021 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の代謝機能を活用した新規バイオプロセス技術の構築
Project/Area Number |
21J21584
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中野 美帆 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | Cytochrome P450 / キアゲハ / アシタバ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アシタバを給餌したキアゲハ糞に含まれる化合物の構造解析を中心に研究を行い、その成果を学会で発表した。 申請者のこれまでの研究から、アシタバを給餌したキアゲハ糞にはヒト大腸がん由来細胞株HCT116に特異的に細胞生存抑制作用を示す化合物(化合物1)が含まれることが示されている。今年度は化合物1の単離を試みたが、アシタバの栽培条件の変化などが原因で単離できなかった。一方で、キアゲハ糞抽出物分離後の化合物1が含まれる画分とは異なる画分においてヒト肝がん由来細胞株HepG2やヒト膵臓がん由来細胞株MIA PaCa2など、種々のヒトがん細胞株に生存抑制作用を示す化合物(化合物2)が含まれることが示された。この成果を第6回蚕糸・昆虫機能利用関東地区学術講演会で口頭発表し、特別賞を受賞した。 化合物1及び2は、極性や生物活性の違いから構造が異なることが示唆された。化合物2はアシタバの栽培条件によらずキアゲハ糞に含まれることが示唆されたため、この化合物の単離及び構造決定を遂行中である。 糞には代謝産物が含まれるため、アゲハチョウ科昆虫において食草成分を代謝する酵素であるとされるCytochrome P450(CYP)の解析が重要である。キアゲハとナミアゲハの中腸及び脂肪体のRNA-Seqのデータを解析して得られたCYPの発現量を比較し、特定のCYPの発現に差があることが明らかになった。さらに、計画にはなかったが、化合物1を含むキアゲハ糞由来フラクションを処理したHCT116における発現変動遺伝子を解析し、作用機序を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
キアゲハ糞に含まれる化合物2は微量であり、単離するには成分の分離作業を繰り返す必要がある。今年度は分離に時間を要してしまい、CYPの機能解析を実施することができなかった。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、野外でのキアゲハの採集が順調に進められず、飼育の開始が9月頃になってしまったため、化合物2の単離に必要な量の糞を採集することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度に休眠させたキアゲハを用い、ハンドペアリングによってキアゲハを安定的に飼育して化合物2の単離に十分な量の糞を採取する。その後、化合物2の構造を決定し、その構造を変化させ、化合物1と同じ活性を示す化合物が得られるかどうかを検討する。これにより、化合物1と化合物2の構造と生物活性の違いを検討する。また、糞に含まれる化合物2が微量であることから、この化合物は幼虫の体内に蓄積している可能性が考えられるため、虫体の抽出物の成分を分離し、活性を評価する。また、キアゲハ由来成分の解析と並行して、キアゲハとナミアゲハで発現に差があったCYPの機能解析及び機能比較を実施する。
|