2023 Fiscal Year Annual Research Report
木材腐朽菌が放散する揮発性有機化合物を介した微生物間クロストーク
Project/Area Number |
22KJ1230
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
堀川 翔子 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 木材腐朽菌 / 揮発性有機化合物 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物は代謝の過程で揮発性有機化合物(Microbial Volatile Organic Compounds; MVOCs)を放散する。MVOCsの中には,生物に対して活性を持つものが存在し,その特異な生物活性を通じて,生物間相互作用において重要な役割を果たすことが示唆されている。申請者らは,木材腐朽菌も他の微生物と同様にMVOCsを放散すること,および自然界において複数種の木材腐朽菌が同一基質上(例;木材)に生息することに注目し,木材腐朽菌間においても,MVOCsが同様の役割を果たし,MVOCsを介した木材腐朽菌同士の相互作用が存在すると仮説を立てた。本研究では,前述の仮説を立証することを目的とした。具体的には,木材腐朽菌から放散されるMVOCsが,木材腐朽菌の菌糸成長に及ぼす影響を調査し,さらにMVOCsによって菌糸成長が変化した時の遺伝子発現を調査することで,これまで現象論にとどまっていたMVOCsによる菌糸成長変化のメカニズムを解明することを目的とした。 令和5年度は,令和4年度に実施した実験をふまえ,ゲノム情報が公開されているGanoderma lucidumを対象とし,MVOCsが本菌に与える影響を遺伝子レベルで調査するため,RNA-seqを行うこととした。まず,複数のMVOCsを本菌に暴露し,RNA-seqに適する条件を探索した。その中で顕著な変化が見られた条件を選抜し,MVOCs暴露区および非暴露区の比較トランスクリプトーム解析を実施した。その結果,MVOCs暴露区では,菌糸成長に関与すると考えられる複数の遺伝子の発現変動が見られ,これは顕著な菌糸成長変化の裏付けとなると考えられた。また,MVOCsの暴露により遺伝子の発現が変動していたことは,本菌がMVOCsを認識していることを示唆しており,MVOCsを介した木材腐朽菌間相互作用の存在を支持するものである。
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