2022 Fiscal Year Annual Research Report
Droplet impact on soft substrates for 3D bioprinting
Project/Area Number |
22J13343
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
横山 裕杜 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 液滴衝突 / 応力場計測 / 軟質材料 / 光弾性法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,「光弾性法を利用した基板内応力場測定法の確立」,「液滴-基板の動的相互作用を考慮し最大半径と基板内応力を予測する理論モデルを構築」に取り組んだ.前者に関して,まず,光弾性法によって実験的に得られる偏光の位相差と方位の情報について,応力場の解析解から予測される位相差・方位分布と比較検証を行った.その結果,実験値と理論値の良い一致が得られ,これまで未検証であった大変形を伴う軟質材料に対しても光弾性法の理論が適用可能であることを示した.この成果は国際共著論文として国際学会誌(Yokoyama et al., Opt. Lasers Eng., 2023,Mitchell and Yokoyama et al., J Mech. Phys. Solids., 2023)で発表した.また,計測した位相差・方位角のデータから基板内応力場を再構成するトモグラフィー手法の構築にも成功した.この成果は,国内・国外学会(日本実験力学会2022年度年次講演会,アメリカ物理学会流体力学部門2022,他1件)で発表し,現在,国際学会誌への投稿に向けて筆中である.後者に関して,基板の材質や液滴物性を変更した実験を行い,発生する応力場の特徴について調査した.また,令和5年度に実施予定の「バイオインクに近い液滴(模擬バイオインク)の衝突挙動の調査」を一部先行し,粒子入り懸濁液の液滴衝突実験や,ハイドロゲルビーズの生成に関して実験環境の整備と予備実験を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光弾性法は,もともとガラス等の硬い材料内の応力場計測手法として開発されたが,軟質材料に対しての適用可能性は定量的に調べられてこなかった.そこで,ガラスの1/1000,000の柔らかさをもつゼラチンゲルを用いて,実験的に得られる偏光情報を,応力場の解析解から予測されるそれと比較した.その結果,実験値と理論値の良い一致が得られ,これまで未検証であった大変形を伴う軟質材料に対しても光弾性法の理論が適用可能であることを示した.また,弾性体同士の接触問題として代表的なHertz接触理論に対して本計測法を用いることで,物質内の最大主応力を計測することが可能であることを示した.これらは国際共同研究として実施し,光学分野のQ1ジャーナルであるOptics and Lasers in Engineering,および機械工学分野のQ1ジャーナルであるJournal of Mechanics and Physics of Solidsで発表した.また,最大主応力だけでなく応力場の全視野計測を実現するため,計測した位相差・方位角のデータから基板内応力場を再構成するトモグラフィー手法の実装に成功した.実装においては,既存手法をベクトルトモグラフィーと線形補間を含むアルゴリズムへと改良し,応力算出精度の向上と計算時間の短縮に成功した.本手法を用いて,基板材質や液滴物性を変更した系統的な実験を行い,発生する応力場の特徴について調査した.さらに,令和5年度実施予定の「バイオインクに近い液滴(模擬バイオインク)の衝突挙動の調査」を一部先行し,粒子入り懸濁液の液滴衝突実験や,ハイドロゲルビーズの生成に関して実験環境の整備と予備実験を行った. 以上から,現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
光弾性計測で得られた偏光情報から応力場を再構成する手法については,その適用範囲や精度に関する定量的な考察や提案がなされている例はない.そこで,開発したアルゴリズムと従来手法に関してこれらの検証を行う.得られた成果は,国際雑誌へ投稿する.また,現在進行中の系統的な液滴衝突実験を推し進め,基板内に生じる時空間的に非一様な応力場の特徴について定量的な考察を与える.具体的には,衝突させる液滴の物性情報と衝突条件をパラメータとし,応力場の特徴量をマッピングしたフェイズダイアグラムを作成する.これにより,衝突させる液滴の情報からどのような応力場が生じ得るかの予測が可能になる.「バイオインクに近い液滴(模擬バイオインク)の衝突挙動の調査」では,ハイドロゲルビーズの量産が課題となっている.ハイドロゲルビーズの量産においては生体工学を専門とする研究者と共同し,課題を克服する.これにより,粒子入り懸濁液,ハイドロゲルビーズ入り懸濁液,高速マイクロ液滴を使用した液滴衝突実験と基板内応力場計測を行い,ニュートン流体の液滴衝突現象では見られない特異な応力場を見出す. 得られた成果は,学術論文としてPhysics of FluidsやPhysical Review Fluidsなどへの投稿する予定である.
|