2023 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎・大腸がんモデルにおける残存細胞群の粘膜再生とがん化特性の解明
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22KJ1244
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小林 美央 東京農工大学, 大学院農学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 粘膜再生 / Unrestituted cells / PIC / Transition Zone / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①潰瘍性大腸炎モデル(DSS)におけるUnrestituted cells (UCs)の空間領域特異的トランスクリプトーム解析への条件検討、②大腸-肛門移行帯(Transitional Zone:TZ)にみる偽癌腫様過形成の分子病理学的特徴について解析を進めた。実験①で検討した光単離化学法 (Photo-Isolation Chemistry:PIC)とは、切片上の微小細胞集団における遺伝子発現情報を高い解像度で検出できる空間トランスクリプトーム解析である。私が調べた限り、これまで大腸組織においてPIC解析の報告はないことから、本年度はUCsの特異的遺伝子探索に供する凍結標本作製条件を確立することを目的とした。凍結標本において適切な形態保持の条件と多重蛍光染色条件(上皮系細胞接着指標E-cadherinと幹細胞指標LGR5および大腸陰窩娘細胞指標SOX9)を確定し、RIN(RNA Integrity Number)値を計測したが、対照群、DSS群ともにリン値が低いことが明らかになった。実験②では、パラフィン切片上から正常TZ、偽癌腫様過形成を示すTZ、大腸粘膜に対してマイクロダイセクションを実施後、液体クロマトグラフィーを質量分析計に接続したLC-MS/MS解析を行い、偽癌腫様過形成TZ蛋白の同定を試みた。また、免疫組織化学解析による定量解析(陽性細胞標識率/TZ長)と幹細胞の関与を検討した。その結果、TZにおいて新たなタイプのケラチンが検出され、その過剰再生にはSOX9増加を背景にしたLGR5とSOX2の経時的な発現連動が関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験①では、PIC解析に供する標本作製条件の検討により、RIN値が対称群およびDSS群ともに低いことが明らかになった。免疫組織化学染色の条件は確定していることから、RNA分解抑制の原因を追究することが、UCsの特異的遺伝子の探索と確立を実現する手掛かりとなることが分かった。実験②では、TZの組織学的特徴に加えLC-MS/MS解析を実施したことにより、ケラチン蛋白の多様な発現が偽癌腫様過形成の発生に関与していることが明らかとなった。TZにおける免疫組織化学染色では、TZ部位と再生陰窩における比較定量解析から、SOX2、SOX9、LGR5、Ki-67において正の相関がみられ、特にSOX9で高い相関が示された。TZと大腸粘膜は連続しているにもかかわらず、両者を比較した研究報告はこれまでにないことから、本研究結果は新規性が高いといえる。これまでに明らかになったTZの結果について、現在論文準備中である。また現在、厚切り光顕用パラフィン切片からUCsとTZの立体構造解析を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
①PIC解析における大腸組織RNA分解抑制条件の追加検討とUCs特異的遺伝子の確立、②in vitro解析を加えたTZの分子病理学的特徴解析、③UCsおよびTZの超微形態評価、④BrdU投与のタイミングの追加および異なる細胞増殖指標 (IdU、EdUなど)を併用したトレーシング解析によるUCsの動態解明、をテーマにおき、3次元的な組織変化と分子病理学的解析の両面からUCsおよびTZの細胞特性を確立し、新たな粘膜再生およびがん化メカニズムの提案を目指す。
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Causes of Carryover |
2023年度に予定していたPIC解析が次年度まで継続になったため、PIC解析費用を次年度に計上することになった。また、新たな解析方法に着手することから、次年度に論文投稿予定が増加するため、その分の予算を繰り越した。
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