2023 Fiscal Year Research-status Report
多段階成長因子徐放により組織再生を促すダブルネットワーク超分子ペプチドゲルの開発
Project/Area Number |
22KJ1251
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
矢口 敦也 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己集合性 / ナノファイバー / 高次構造 / 組織培養 / セルフソーティング / ヒドロゲル / 構造可変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリクスは、細胞の三次元的な足場として、また適切な時空間にシグナル分子や栄養などの物質を生体組織へと供給する媒体として働くゲル状組織である。このような細胞外マトリクスの多角的な機能は、生体内における組織の異方的な発達や生体機能の維持に寄与している。したがって、細胞外マトリクスの機能を人工的に模倣した新規材料の創出は、組織の再生・再構築を促す薬や組織培養の外環境として有用である。ここで、細胞の足場として機能する人工材料は数多く開発されてきたが、複数の成長因子蛋白質の拡散を直交的に制御する機能を持ち合わせた材料の例はほぼない。本研究では、細胞接着性や生分解性を持つこと、分子集合を精密に制御できることから自己集合性のペプチドに注目し、多段階的な成長因子の徐放機能を再現するダブルネットワーク超分子ペプチドゲルの開発を目的としている。 2023年度は、昨年度に開発した2種の自己集合性ペプチドを混合し形成させたヒドロゲルが、ダブルネットワークへとセルフソーティングしたことを電子顕微鏡や共焦点顕微鏡を用いた観察で明らかにした。また、低分子ペプチドゲル化剤の応用可能性を広げるため、外部刺激応答性の付与を検討した。刺激応答性ユニットをペプチド分子へと位置を変え導入したところ、集積形状が変化し、そのマクロ物性にも差を生むことが示された。さらには、開発した低分子ペプチドゲル化剤を用いた組織培養応用を行い、生体組織の三次元培養に成功した。 これらの成果を基に、2023年度は、10件の学会発表(1件国際学会、4件受賞)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、2023年度は、開発したダブルネットワーク超分子ペプチドゲルの機能応用を計画していた。これまでに、ダブルネットワーク超分子ペプチドゲルの化学的な性能を調べ、その機能を用いた細胞外マトリクス代替応用を進めている。その一つが組織培養であり、現時点で生体組織の立体培養に成功している。加えて、ペプチド分子内の官能基の位置調整による集積挙動の制御など、予期していなかった研究の広がりを見せている。 したがって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、開発したダブルネットワーク超分子ペプチドゲルの細胞外マトリクス代替応用を目指すとともに、その過程で見つかった自己集合性ペプチドについても研究成果をまとめ、さらなる成果創出に繋げる。
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