2023 Fiscal Year Research-status Report
分子線エピタキシー法による鉄系超伝導Ba122エピタキシャル薄膜の物性開拓
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22KJ1252
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
秦 東益 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / エピタキシャル薄膜 / 分子線エピタキシー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の2点の実験を行った。 1点目は、超伝導特性のドープ量及び歪みの依存性の探索に関する実験である。いかなる成膜条件でも組成が変化しない純物質化合物であるCaF2をバッファ層の候補とし、様々な酸化物基板上にCaF2を蒸着し、理想的な配向面を得ることを試みた。その結果、LSAT基板以外のほとんどの基板上で異配向である(111)面が主相として得られた。LSAT基板上に成膜温度を最適化した温度(500℃)でCaF2を成膜し、その上にBaK122薄膜を成膜した。直接BaK122のエピタキシャル成長が可能な3種類のフッ化物基板(CaF2, SrF2, BaF2)とCaF2をバッファ層として成膜したLSAT基板の上に同時にBaK122を成膜し、超伝導特性のドープ量及び歪みの依存性の探索を試みた。XRDによる結晶構造の評価と抵抗率測定による超伝導転移温度の測定により、使用基板の違いにより、異なる格子定数と超伝導転移温度が得られた。格子歪みが物性へ影響を及ぼしていることが実験結果より示唆された。実験結果について国際会議にて口頭発表を行った。 2点目は、BaK122の粒界特性の解明である。バイクリスタル基板上により結晶性の良いBaK122エピタキシャル薄膜の作製及び粒界傾角が30°より大きいバイクリスタル基板上への成膜を行うために、SrTiO3(001)(以下STO)基板への成膜を試みた。未処理のSTO基板上にBa122をやや低い温度である600℃で成膜した後、その上にBaK122を400℃で成膜した。良好なBaK122エピタキシャル薄膜をSTO基板上に成膜できたことより、今後はSTOバイクリスタル基板上へ成膜していきたいと思う。また、実験結果は学術論文として出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題について、順序立った計画を立て、それに基づいて実験を遂行した結果、順調に研究を遂行することができた。具体的には、以下の2点が挙げられる。 1点目は、酸化物基板上へCaF2バッファ層を成膜する際の成膜条件の最適化である。実験前に、結晶構造が合う入手可能な基板をリストアップし、それぞれについて温度を変えながら成膜を行った。すべての結果を得るために時間は要したが、その後再度バッファ層の最適化を行う必要がなくなり、その後の実験が順調に遂行できた。 2点目は、SrTiO3(以下STO)基板上への成膜である。最初に成膜する際には知見があるMgO基板と同様にSTO基板上に成膜を行った。しかし、STO基板上に成膜した薄膜からMgO基板上に成膜した薄膜とは異なる特徴が得られた。結果を踏まえて、計画を立て、成膜前の基板の処理、基板の成膜温度、各元素の供給量の全てを最適化した。計画通りに実験をすることで、目的としていた薄膜を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
SrTiO3基板上へエピタキシャル薄膜の作製に成功したため、SrTiO3バイクリスタル基板上への薄膜の作製を行う予定である。入手可能な範囲で粒界傾角が大きい基板上に試料を作製することで、多結晶体における輸送電流制限因子を調べる予定である。また、試料を作製するときにKドープ量を変化させることで、複数のKドープ量における粒界特性に及ぼす影響を調べる予定である。
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Research Products
(2 results)