2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J00425
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 翔太 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ゼータ関数 / L関数 / 値分布 / 極限定理 / 独立性 / モーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、確率論的極限定理からL関数を理解することにより、先行研究の改善を行うこと、およびL関数に関係する未解決問題に応用することである。本年度ではゼータ関数・L関数の値分布についての幾つかの結果を証明することで、この目的に対して一定の成果を得た。 本年度で得られたひとつ目の結果は、Dirichlet L関数の臨界領域内での非独立性の証明である。Dirichlet L関数やRiemannゼータ関数を始めとする数論的なL関数は「統計的に独立である」、というSelbergの主張が知られている。実際に独立であることは、BombieiriとHejhalの研究や申請者とLi氏の研究などで既に証明されている。一方で、これらの先行研究は、臨界線と呼ばれる臨界領域内の特定の直線上のみでの議論である。申請者はLi氏との共同研究で、一般の臨界領域までそれら先行研究を拡張した。その結果として、Dirichlet L関数は臨界線を除く臨界領域内で、非独立となることを証明した。その非独立性は、L関数の同時極値についてのMahatab、Pankowski、Vatwaniらの結果を、Dirichlet L関数の場合で改良を系として導く。 本年度で得られたふたつめの結果は、Riemannゼータ関数の偏角ひねりモーメント母関数のオーダー評価についての新結果を証明したことである。NajnudelはRiemannゼータ関数の偏角のモーメント母関数のオーダー評価について、Soundararajanが証明したRiemannゼータ関数のモーメントの結果に類似した評価を証明した。本研究では、Najnudelが議論したモーメントをより広い形に一般化し、それをHarperのモーメントの結果に類似する評価へ改善した。 上述のふたつの結果についての論文は執筆中であり、近日中には公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では確率論的極限定理からL関数を理解することが目的である。L関数の独立性については、Dirichlet L関数が臨界領域内で非独立であることを示すことができたので、この点については本研究課題の目的に対して一定の成果を挙げられたと考える。一方で、一般のL関数の独立性についての進展は得られなかった。これは課題のひとつである。 また、Riemannゼータ関数の偏角ひねりのモーメント母関数についての結果は、Najnudelの結果を改善するものであり、これについても本研究課題の目的に対して一定の進展を与えた結果である。一方で、申請者はこの結果を、Riemannゼータ関数の中心極限定理の大偏差でHarperの手法を解釈し、その系として証明することを目指していたが、それを達成することはできなかった。加えて、この研究の発展として、L関数の同時下限モーメントの研究への発展を考えている。しかし、同時下限モーメント研究に進むためには、L関数の同時分布の大偏差からの理解が重要であり、前述の課題はその壁となる。 以上の研究成果と課題を併せて、想定以上には進んでいないが、おおむねに順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては現在までの進捗状況で述べた、大偏差とモーメントについての課題を解決することと、Dirichlet多項式に関する誤差つき中心極限定理の精密化についての研究を進める。 Harperの方法は本質的にはモーメント母関数の計算であり、これは確率論的に解釈できる。そのため、彼の方法を用いて、Riemannゼータ関数の分布関数の評価することは可能であると予想できる。しかしこの手法では、分布関数の漸近挙動を導出できないこともこれまでの先行研究から示唆される。申請者はこれらの事実を数学的に明確にし、Harperの手法を用いた中心極限定理の大偏差評価の導出の問題点を明らかにする。その後にその問題点を解決するために、新しい漸近公式の証明や、本問題と零点分布との関係の明示化、などについて議論する。 上記の問題が完了次第、Dirichlet多項式の分布についての研究を進める。本研究では、Dirichlet多項式の分布の下からの評価についてのKowalskiとNikeghbaliらの結果を改善することを目標とする。
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Remarks |
個人ホームページ(改)
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