2022 Fiscal Year Annual Research Report
魚はどのように陸に上がったか? ~水陸両適応の古代魚を用いた器官可塑性の解析~
Project/Area Number |
21J21544
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 優希 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ポリプテルス / 陸上適応 / 繊毛 / 高CO2 / 古代魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
約3億5000万年前、一部の魚が陸上へと進出を開始した。水中から陸上へと、大きく異なる環境への適応が起きたにもかかわらず、化石記録から得られる情報は限定的である。本研究課題ではポリプテルスやハイギョといった、古くからの硬骨魚類の形質を残す現生魚類を用い、形態、生理、遺伝子発現、ゲノムといったような様々な観点から魚類の陸上適応の理解を目的としている。
水中で呼吸する魚においてエラは必須であるが、陸上進出に伴って消失していった。本研究では肺呼吸とエラ呼吸が両方可能な現生種、ポリプテルスに着目した。中でもエラの微細構造に着目し、走査型電子顕微鏡および免疫染色を用いてポリプテルスのエラにおける繊毛の存在を明らかにした。この繊毛に関して、本年度は流れを可視化することで、一方向にエラの表面上に流れを生み出す動繊毛であることを示した。また、ポリプテルスを陸上や高CO2環境といった条件下で飼育することで、その繊毛が可塑的に出現・消失することを明らかにした。遺伝子発現解析(RNA-seq解析)によって、この繊毛は免疫系や化学受容などの機能を担っていない可能性が示された。 周りの環境、特に陸上環境に応じて可塑的にエラが変化することを示した本研究は、魚類から両生類までの間に失われたエラの進化を解き明かす上で重要な手がかりであると考えている。 この研究成果は査読付き国際雑誌 Ecology and Evolution に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子発現解析によって存在と機能が明らかになったポリプテルスのエラの繊毛についての論文が、査読付き国際誌に掲載となった。 また、同時並行でポリプテルスの陸上環境下における生理機能についての研究も行っており、こちらについても進展が見られた。 ハイギョのゲノムを用いたケラチン遺伝子の進化と陸上適応の関連についての研究もデータが揃い、論文執筆の段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の陸上環境下におけるポリプテルスの恒常性維持機能の解析について、追加のRNA-seq解析などを実施する予定である。また、ハイギョのケラチン遺伝子に関する研究は現在論文を執筆中である。
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Research Products
(3 results)