2023 Fiscal Year Annual Research Report
緩やかな環状構造を持つπ拡張スチルベン:凝集誘起発光の学理と環境応答性液晶の追究
Project/Area Number |
22KJ1276
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩井 梨輝 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 凝集誘起発光 / 無輻射失活 / 固体発光 / 液晶 / ネマチック / スメクチック |
Outline of Annual Research Achievements |
凝集誘起発光(AIE: aggregation induced emission)色素は,希薄溶液中では発光性を示さず,色素の凝集により強発光性を示す。従来の典型的な発光色素は希薄溶液中では強発光性を示す一方で,凝集した場合には消光してしまうことが多いため,AIE色素は凝集状態での発光が重要であるバイオイメージングや有機EL材料などへの応用が期待されている.本研究では、AIE現象の学理の深化およびAIE色素開発に向けた合理的な設計戦略の確立を目的としている.また、液晶相や準安定状態の発光挙動を検討し、新規AIE型環境応答性液晶の創製を目指している. 申請者は,分子構造とAIE特性の関係性を明らかにするため、橋かけスチルベンを基本骨格とし,メチル基やターシャリーブチル基を導入した化合物の合成を行い,それらの化合物に対して,溶液中のUV-Vis吸収スペクトル測定,蛍光スペクトル測定,蛍光量子収率の測定,さらに,固体状態の蛍光量子収率の測定を行った.また,溶液中で非常に蛍光量子収率が低い化合物に対し,超高速時間分解過渡吸収測定および量子化学計算による励起状態のポテンシャルエネルギー曲面の算出により,高速な無輻射失活過程を導く設計指針に関して議論した.また,固体状態の蛍光寿命測定および単結晶X線解析を行い,分子・結晶構造と発光特性の関係性を明らかにした. また,申請者は橋かけスチルベンの液晶性を検証するために、両末端にアルキル基・ジメチルアミノ基やアルコキシ基などの極性基を導入した橋かけスチルベンを合成し,それらの液晶特性キャラクタリゼーションを行った.それらは、橋かけ構造により相転移温度の低下が起こり、比較的低温でカラミチック液晶性を示した.さらに,橋かけスチルベンの優れた固体発光特性を活用し,橋かけスチルベン液晶分子のみからなる電場応答型発光スイッチングデバイスを開発した.
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