2021 Fiscal Year Annual Research Report
炭素炭素二重置換同位体分子計測による新しいバイオマーカーの開発
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21J22057
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田口 宏大 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 二重置換同位体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は有機分子の生物・非生物起源を判別することを目的として、実験でメタンから重合したエタンおよび多様な天然エタンガスの13C-13C二重置換同位体分子種を計測することで生物・非生物過程に特徴な13C-13C二重置換度を明らかにする計画である。 まず、13C-13C二重置換同位体計測の標準化を行い、前処理と質量分析の際のエラーは無視できるほど小さいことを明らかにした。この成果は査読付き国際学術誌に受理された(Taguchi et al., RCMS 2021)。これにより可能になった13C-13C二重置換度の厳密測定は、生物・非生物過程で生じる同位体分別メカニズムの解明に不可欠である。 次に、日本中から採取した天然エタンガスを分析することで、熱分解起源エタンの13C-13C二重置換度の特徴を明らかにした。本年度は、長野県の白馬八方温泉、秋田県の後生掛泥火山、新潟県の十日町泥火山から天然ガスを採取した。結果、生物起源エタノールおよび天然エタンガスの生物起源有機物は特徴的な13C-13C二重置換度を示すことが明らかになった。さらに、予察的に有機分子の熱分解で生成したエタンを分析したところ、その二重置換度は分解によって変化がほとんどなく、もとの同位体分子情報を保存することが示唆された。 一方、非生物的にメタンから重合したエタンを計測したところ、生物起源有機物と比較して明らかに低い13C-13C二重置換度を示した。本年度は、メタンの雷放電、紫外線照射、ガンマ線照射実験により生成したエタンを計測した。以上の結果から、有機分子の13C-13C二重置換度が生物・非生物を判別する新しいバイオマーカーとなる可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤である13C-13C二重置換同位体分子計測法の前処理・分析過程で生じるエラーを、13C-13Cラベルエタノールを用いることで詳細に評価した。加えて、当初の計画通り長野県の白馬八方温泉、秋田県の後生掛泥火山、新潟県の十日町泥火山から天然ガスを採取した。多岐にわたる天然エタン分析によって、熱分解エタンに特徴的な13C-13C二重置換度を明らかにした。またエタンの合成実験(メタンに雷放電、紫外線照射、ガンマ線照射)も順調に進めており、エタンの13C-13C二重置換同位体分子を計測し、非生物過程で生じる同位体分別を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでに明らかになった生物・非生物過程に特徴な13C-13C二重置換度のメカニズムを解明する。そのために確立したフッ化法を用いて、13C-13C二重置度計測をプロパンにも拡張する。また、有機分子の熱分解実験を行い、その結果と天然エタンを比較することにより、より堅牢なバイオマーカーを構築する。
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Research Products
(2 results)