2022 Fiscal Year Annual Research Report
反強磁性体における高次トポロジカル相に由来した新奇物性の理論的探索
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21J22264
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 悠太朗 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 結晶平衡形 / 高次トポロジカル絶縁体 / トポロジカル結晶絶縁体 / トポロジカル相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、結晶対称性に保護されたトポロジカルな境界状態が結晶平衡形に与える影響に関する研究と2次元トポロジカル相転移に関する系統的な研究を行った。以下にその二つの研究内容をまとめる。
(1)結晶対称性に保護されたトポロジカル絶縁体の持つ境界状態が結晶平衡形に与える影響に関する研究を行った。前年度は、グライド対称性に保護されたトポロジカル結晶絶縁体の表面状態に注目したが、本年度は、鏡映対称性に保護されたトポロジカル結晶絶縁体の表面状態と空間反転対称性に保護された高次トポロジカル絶縁体の持つヒンジ状態に注目した。それらの境界状態は、出現する位置や対称性などに依存して、それぞれ異なる形で表面エネルギーに影響をもたらす。これにより、表面エネルギーが通常の絶縁体とは異なる面方位依存性を持ち、それにより、ユニークな結晶平衡形をもたらすことを示した。この結果から、トポロジカル絶縁体、トポロジカル結晶絶縁体、高次トポロジカル絶縁体という異なるタイプのトポロジカル相における境界状態の結晶平衡形への影響を体系的に理解することができた。
(2)すべてのlayer groupにおける2次元トポロジカル相転移に関する系統的な研究も行った。ブリュアンゾーンの高対称点において、価電子バンドを伝導バンドが異なる既約表現を持ち、パラメータ変化に伴い、それらのバンドが反転するときに、トポロジカル相転移が生じるかどうかについて、80種類あるすべてのlayer groupについて網羅的に研究を行った。特に3回回転対称生がある場合には、異なる既約表現を持つバンドの反転により、必ずトポロジカル不変量が変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上の研究実績の概要で述べたように、本年度は、(1)結晶対称性に保護されたトポロジカル絶縁体の持つ境界状態が結晶平衡形に与える影響に関する研究と(2)すべてのlayer groupにおける2次元トポロジカル相転移に関する系統的な研究を行った。(1)の成果は、前年度に今後の研究の推進方策として述べた内容であり、前年度の計画通りの研究成果を得ることができた。この成果は論文としてまとめ、学術誌に投稿し、現在、査読中である。そして、(2)の成果は、論文としてまとめ、査読付きの学術誌からすでに出版された。また、これらの研究に加えて、非エルミート系における結晶対称性に保護されたトポロジカル相の役割に関する研究も行っており、こちらの研究成果も現在、論文としてまとめている途中である。このような進捗状況から、研究計画は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今までは、トポロジカル相が結晶の平衡形に与える影響に関する研究を行ってきたが、今後はトポロジカル相が非平衡の結晶成長に与える影響について研究を進めていく予定である。特に、高次トポロジカル絶縁体の持つコーナー状態やヒンジ状態がどのように結晶成長にどのような効果をもたらすのかに注目する。また、それと並行して、結晶対称性に保護されたトポロジカル相と非エルミート系の関係についても研究を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)