2023 Fiscal Year Annual Research Report
分子内[2+2+2]付加環化反応を鍵とする環状π共役分子の不斉合成と機能創発
Project/Area Number |
22KJ1279
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野上 純太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ロジウム触媒 / 不斉合成 / 構造有機化学 / トポロジー / メビウスの輪 / アルキン / カーボンナノベルト / キラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度代表者らは、複数のねじれを分子内にもつベルト型芳香族分子のステレオ選択的合成を達成した。ねじれたベルト型芳香族分子は、メビウスの輪などの興味深い3次元構造を示し、それに基づく独特の物性が注目される。しかしながらsp2炭素骨格を環状に曲げ、さらにツイストを加えることは、分子の歪みを極端に増加させるため、複数のねじれを導入することは非常に困難な有機合成課題であった。また、ねじれの右巻き/左巻き方向を高いエナンチオ選択性で制御する不斉合成法もこれまで確立されていなかった。そこで代表者たちは、直線形の芳香環パーツと馬蹄形の芳香環パーツからなるハイブリッドな基質デザインを新たに設計し、「分子ひずみを抑え」ながら「分子のベルトをねじる」合成法を提案した。具体的には、キラルなカチオン性ロジウム触媒を用いたアルキンの分子内[2+2+2]付加環化反応を用いた合成を計画し、その結果、世界で初めて複数のねじれを持つベルト型芳香族分子の不斉合成を達成し、最大99% eeという極めて高いエナンチオ選択性を見出した。本研究はツイストキラリティという、中心不斉や軸不斉などの古典的なキラリティとは異なる新たな不斉合成化学の開拓として意義深い。また、複雑なトポロジーを持つ有機分子は、従来の分子にはない特異な光学特性や電子特性を示す可能性を秘めており、機能性有機材料の開発に貢献できると期待される。 研究期間全体を通して、代表者は不斉ロジウム触媒を用いたアルキンの[2+2+2]付加環化反応を軸に、面不斉/らせん不斉/トポロジカル不斉といった多様なキラリティを有するキラル環状π共役分子の不斉合成を達成した。本合成法は、キラル環状π共役分子の触媒的不斉合成を可能とする現状唯一の手法として有用であるといえる。本研究で確立した合成指針は、さらなる未踏キラル有機分子材料の創製に向けた基盤となると期待される。
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