2021 Fiscal Year Annual Research Report
アルカンの脱水素カップリングにおける水素の逆スピルオーバーを利用した触媒系の設計
Project/Area Number |
21J22878
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高畠 萌 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アルカン / ベンゼン / 脱水素カップリング / 白金 / 固体酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アルカンの脱水素カップリング反応において水素の逆スピルオーバー現象を 利用した高機能な触媒反応場の設計を目的としている。今年度は、[1] n-ヘプタンとベンゼンの脱水素カップリング反応における様々な担持金属と固体酸の混合触媒の活性評価、[2] 調製した触媒の構造解析、[3] ベンゼン以外の求核剤やn-ヘプタン以外のアルカンへの適用を試みた。 n-ヘプタンとベンゼンの反応では、担持白金と固体酸の混合触媒を用いることで固体酸のみの場合と比較して大幅に目的のアルキルベンゼンの収量が向上することがわかった。担持白金のみの場合では目的のアルキル化反応は進行しなかったため、担持白金は固体酸によるアルキル化反応を促進する効果があることが示唆され、本研究において提案する水素の逆スピルオーバーを利用した反応促進機構であることを強く支持している。 調製した触媒の構造解析は、XRDやXAFS、TEM等を用いて行った。担持白金触媒では、白金は0価のナノ粒子が形成されていることがわかった。 基質展開では、ベンゼン以外の求核剤として、トルエンやキシレン、フェノールについてもベンゼンの場合と同様にアルカンによるアルキル化が進行することを見出した。また、アルカンについてもn-ヘプタンの他にシクロペンタン等のシクロアルカンやヘキサン等の他の直鎖アルカン、より低級のプロパンによるアルキル化においても担持白金と固体酸の混合触媒が有効であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アルカンの脱水素カップリング反応において水素の逆スピルオーバー現象を利用した高機能な触媒反応場の設計を目的としている。 n-ヘプタンとベンゼンの反応では、担持白金と固体酸の混合触媒を用いることで固体酸のみの場合と比較して大幅に目的のアルキルベンゼンの収量が向上することがわかった。担持白金のみの場合では目的のアルキル化反応は進行しなかったため、担持白金は固体酸によるアルキル化反応を促進する効果があることが示唆された。今年度は粒子間の水素移動を直接的に観察することはできなかったが、触媒の分離実験等の様々な手法によりこの現象を強く支持する結果が得られた。 反応前後の触媒構造解析は、XRDやXAFS、TEM等を用いて行った。担持白金触媒では、白金は0価のナノ粒子が形成されていることがわかった。また、担体によって異なるサイズの白金粒子が形成していることが分かった。 基質展開では、ベンゼン以外の求核剤として、トルエンやキシレン、フェノールについてもベンゼンの場合と同様にアルカンによるアルキル化が進行することを見出した。また、アルカンについてもn-ヘプタンの他にシクロペンタン等のシクロアルカンやヘキサン等の他の直鎖アルカン、より低級のプロパンによるアルキル化においても担持白金と固体酸の混合触媒が有効であることが分かった。 また今年度において報告者は、国内外で6件の学会発表を行い、そのうち3件でポスター賞を受賞した。以上の研究結果から、本研究は現在まで当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) 調製した触媒の構造解析: 触媒活性の評価と並行してXRD, XAFS, XPS, TEM等を用いて反応前後の触媒の構造解析を行う。調製した触媒の構造と触媒活性を比較し、目的の反応に適した調製法や前駆体、担体等を検討し触媒調製へとフィードバックする。 (b) 反応中の活性種観測による反応機構の解明: in-situ IR等を用いて反応中の活性種を観測、反応機構を推定する。想定している反応機構は、酸点によるアルカンのヒドリド引き抜きに続く生成した水素原子のスピルオーバー、金属粒子上における水素の再結合である。そこで、水素を重化した基質を用い、担体表面の水素種の観測を行うことで、水素のスピルオーバーが観測できると考えた。また、反応後の触媒構造解析等も組み合わせることで詳細な反応機構を解明する。 (c) メタンやエタン等の低級アルカンへの展開: シェールガスの有効活用の観点から、メタンやエタンの化成品原料への直接転換は大きなインパクトがある。本研究では、比較的長い炭素鎖を持つアルカンによるアルキル化反応の知見を低級アルカンへと活かすことができると考えられる。そこで、基質をメタンやエタンへと変更し、高級アルカンにおける触媒設計を参考に高活性な触媒を探索する。
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Research Products
(7 results)