2022 Fiscal Year Annual Research Report
Non-Contact Sleep Stage Estimation: Machine Learning in Multi-Imbalance Data for Improvements in Accuracy and Interpretability
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22J13262
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中理 怡恒 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 睡眠段階推定 / 機械学習 / マットセンサ / 睡眠時無呼吸症候群 / 解釈性 / マルチインバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,マットレスセンサなどの簡易センサで専門医師なしに睡眠段階を推定する手法の実用化に向け,(1)一夜の各睡眠段階の割合不均衡を考慮した推定法(2)突発的もしくは数分以上にわたり特徴が出現する睡眠段階にロバストな推定法,(3)年齢やその日の体調などによる個人(内)差を考慮した推定法,の3つのサブテーマに取り組む. 2022年度は,(1)では全睡眠段階を1つの機械学習のモデルで学習するのではなく,睡眠段階毎に2クラス分類としてモデルを学習し,各モデルの推定精度の高さ順に組み合わせる推定法を構築した.これにより,特定の睡眠段階を過剰判定する問題を解決し,従来の全睡眠段階を学習する手法と提案手法を比較すると,平均して17%の推定精度の向上が確認された.また,モデルの解釈のために中途覚醒を学習したモデルを分析したところ,健常者と睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者との間で判定に有効な特徴量が異なることがわかり,SAS診断の指標の1つとなる可能性を示唆した.この成果をモデルの解釈に基づくSAS判定法として全国人工知能学会,学習したモデルの内容を生理学的な知見への紐づけとして日本睡眠学会にて発表し,対外的に評価を受けた.(2)では,計測データに対し,事前に複数の長さで区切り,各長さのデータを個別のモデルで学習し,推定結果を組み合わせる推定法を構築した.REM推定について,従来手法よりも提案手法の平均の適合率が約20%,再現率約40%と大幅に改善し,関連する内容を国際会議のIEEE EMBCにて発表した.さらに,(1)と(2)の複数の長さの組み合わせによる判定とどれか特定の長さでの判定でどちらも,平均推定精度が約59%から約70%に改善され,それぞれ,ヘルスケア・医療情報技術研究会と(3)国際会議のAAAI Spring Symposium Seriesにて発表し対外的に評価を受けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究計画であったサブテーマ(1)と(2)を主に取り組んだ. (1)では,該当する各睡眠段階とそれ以外の2クラスとして睡眠段階毎にモデルを学習し,過剰/過少判定の防止のために学習時の各クラスのデータの割合を調整する手法を構築した.しかし,全体の平均推定精度は59.3%と依然として低くまだ改良の余地がある.また,WAKE推定用の学習済みモデルを分析することで,健常者と睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者で異なる傾向を発見し,解釈性の観点も担保できている.よって,(1)については,推定精度に改善余地はあるものの,計画通りに研究が進んでいると言える. (2)では,複数の時間窓で入力データを区切り,それぞれの長さのデータごとに異なるモデルで学習し,推定結果を組み合わせる手法に取り組んだ.各睡眠段階に最も適する入力の長さを明らかにしつつ,特定の長さだけでなく複数の長さの結果を組み合わせる方が推定精度が高かったことから,複数の長さの組み合わせが重要であることを明らかにすることを達成できた.また,REMの開始/終了判定に取り組んだが,機械学習のみでは限界があり,達成はできなかった. 下半期に,2023年度に研究予定であったサブテーマ(3)として,個人/個人内差による推定誤差を約90分周期の睡眠リズム(ウルトラディアンリズム)を考慮することで補正する方法に取り組んだ.マットセンサから得られる生体振動データからウルトラディアンリズムを推定するベース手法の構築とそれに基づく機械学習による睡眠段階推定の補正手法が既に完成している.また,ウルトラディアンリズムの推定においての課題点,機械学習による睡眠段階推定の補正における課題点の整理も先行して着手した. 以上を総合して,進捗状況としてはおおむね計画通りに進行していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2年間で取り組む3つのサブテーマのうち,(3)年齢やその日の体調などによる個人および個人内差を考慮した睡眠段階推定精度の向上を主に取り組む.具体的には,個人/個人内差によって,誤った睡眠段階推定が誘発され,本来の浅い睡眠と深い睡眠を繰り返す約90分の睡眠リズムであるウルトラディアンリズムに合わない推定結果となるため,ウルトラディアンリズムに基づき各睡眠段階推定モデルの推定結果に重みづけをする方法を提案し,推定精度の向上を図る.まずは,ウルトラディアンリズムを生体振動データから推定する必要があり,先行研究において時間当たりの体動発生頻度から推定する方法が存在し,それを活用する.しかし,この手法は,中途覚醒による寝返りなどのノイズによって推定不能となる恐れがある.これに対し,2023年度の研究計画に従い,中途覚醒判定,異常検知,時系列予測手法によるノイズの除去およびリズムの推定をし,PSG検査を通じて医師によって診断された睡眠段階推定から導出したものと比較し有効性の検証をする.次に,推定したウルトラディアンリズムに基づき睡眠段階推定モデルの推定結果に重みづけしたとしても,モデルの推定確率が高く推定結果が補正されない場合が考えられる.そこで,モデルの推定に対して自信度を算出し自信度が高い/低いに応じて,ウルトラディアンリズムによる重みづけを動的に調整する方法を提案し,有効性を検証する.以上の方策は,30秒ごとの厳密な判定をする機械学習と大雑把な時間に対して判定をする生理学的知見の両側面から推定するハイブリッド手法となるため,それぞれの得意/不得意な部分を補い睡眠段階推定の推定精度向上が期待できる.また,2022年度にて達成できなかったサブテーマ(2)における,REM睡眠の開始/終了判定の推定について,上記の生理学的知見と機械学習のハイブリッドで対応できる可能性が高い.
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