2023 Fiscal Year Research-status Report
電解発生カチオン種の時空間的レドックス制御に基づく医薬分子合成プロセスの確立
Project/Area Number |
22KJ1401
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡本 一央 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 電解反応 / フローマイクロリアクター / プロトン共役電子移動 / PCET |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は下記に示す成果を得た。 モジュラー型フローマイクロリアクターを利用した高効率[3+2]環化付加反応:フロー電解反応場を利用することで、従来高濃度の支持電解質を必要としていた電気化学的[3+2]環化付加反応を0.001-0.01 Mのごく希薄な支持電解質条件で高効率に実施することに成功した。フェノキソニウムカチオン中間体を経由する本反応では、電極間距離を通常の薄層フロー電解反応で用いられる値の3倍程度に拡張することで反応効率の大幅な向上がみられたことから、陽極発生したカチオン中間体が速やかに陰極還元される経路が存在することが示唆された。本反応を利用することで、一切の酸化剤を用いずフロインドリン等の縮環骨格を有する化合物を合成することに成功した。 水素結合複合体によるラジカル反応の化学選択性制御:プロトン共役電子移動(PCET)により生成するアミジルラジカル種が、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)の有無により異なる反応生成物を与える現象を見出した。すなわち、ウリジン2'位水酸基にフェニルカルバモイル基を導入した誘導体を、テトラブチルアンモニウムジブチルホスフェート(Phosphate base)およびメチルビニルケトン存在下で電解酸化するとN-アルキル化された生成物が得られるが、わずか2当量のHFIPを添加して同様の電解反応を実施すると、アミジルラジカルがウラシル塩基へ分子内ラジカル付加して生じる環化体ダイマーが得られた。種々のCV測定により、基質とphosphate baseが形成する水素結合複合体のサイズが水素結合ドナーであるHFIPの添加により増大し、疎水的なメチルビニルケトンとの分子間反応が阻害されていることが示唆され、水素結合複合体による化学選択性を初めて示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画で想定していたフロー電解反応場の設計と合成化学的応用を達成したほか、水素結合複合体がもたらす新奇な化学選択性を見出したため。アミドと塩基が形成する水素結合複合体のサイズがPCETを経由したラジカル付加反応の効率に影響を与える例は近年報告されているものの、化学選択性を左右する現象は今回始めて明らかとなった。本反応を利用して、精密な有機合成反応の設計が可能になると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
最適化したフロー反応系を天然に見られるヘテロ複素環骨格の合成へと応用する。また、ごく低濃度の支持電解質(イオン)条件下で反応を駆動できるという利点を活用し、配位性の少ない電解反応場を設計することでラジカルカチオンおよびカチオン中間体の反応性を最大限に引き出した電解反応を探索する。
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Causes of Carryover |
学術条件整備費を使い切らなかったため。
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