2021 Fiscal Year Annual Research Report
縄文人ウイルスから紐解く古代人バイロームとウイルス進化
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21J22509
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
西村 瑠佳 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 縄文ウイルス / バイローム / 古代DNA / 全ゲノムシーケンシング / ウイルス進化 / Ribo-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、古代ウイルスを同定することから、ウイルス進化、古代人の食餌などの文化的な側面へアプローチする。今まで存在がその明らかでなかった縄文人に感染していたウイルスを網羅的に探索し、ウイルスの進化過程を調べることを目的とする。古代人の体内には現代人と同様に数多くのウイルスが存在していたと考えられ、これらのウイルスのゲノムは古代人骨に残存する古代DNAから同定することが可能である。特に歯や糞石などには口腔内や腸内の環境を反映したウイルスが多く存在すると推測される。そのため、縄文人の歯や糞石から得られるDNAを使って全ゲノムシーケンシングを行うことで、縄文人の体内に存在したウイルスゲノムを調べることができる。これらの全ゲノムシーケンシングデータより、現代人の口腔内や腸内に存在するウイルスを多数同定した。また、同定されたウイルスを系統毎に分類し、バイロームと呼ばれる特定の環境に存在するウイルス集団の組成を特徴付けることに成功した。これによって今まで未解明だった縄文人バイロームに関する知見を得ることができた。また、現代人口腔内バイロームと縄文人口腔内バイロームの比較より、両者の間でウイルス組成に違いがあることが明らかとなり、食生活の変遷などを反映していることが示唆された。 上記と並行し、現代のウイルスの遺伝子を使ったウイルス進化解析の準備を進めた。ウイルスの遺伝子はホストへの適応などの進化過程において重要だが、その多くの発現状態や機能がよくわかっていない。特にウイルスの遺伝子は非常に多様で相同性から遺伝子や機能を推定することは困難である。ウイルス遺伝子同定とその発現状態を解析するために、リボソームが翻訳を行っている領域のmRNA配列を同定するRibo-seqの系の確立をウイルスの宿主細胞を使って行った。今後確立された系を使ってウイルス遺伝子の発現状態を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縄文人の体内に存在するウイルスの網羅的同定を試みた。ウイルスの同定のために、DNA配列を網羅的に決定付ける全ゲノムシーケンシングによって得られた縄文人由来のDNA配列データを用いた。今年度は縄文人の歯髄と歯石、糞石から得られた全ゲノムシーケンシングデータを用いて縄文ウイルスの探索を行った。縄文ウイルスの網羅的探索の際、既知ウイルスとの相同性からウイルス配列を同定する相同性検索を行った。糞石由来の縄文ウイルスの探索結果より、現代人の腸内にも存在する腸内ウイルスが多数検出され、その99.8%は細菌を宿主とするファージ由来であることが明らかとなった。また、現代人腸内にも多く存在するSiphoviridaeのウイルスが多く存在するなど現代人腸内との類似性が見られた。これら糞石のゲノム解析結果をまとめた論文を現在執筆中である。 また、歯髄や歯石由来のウイルスの探索においては検体毎に含まれる縄文ウイルスの組成を決定づけ、口腔内のウイルス群集である口腔内バイロームの特徴付けを試みた。現代人の口腔内ウイルス組成と比較より、現代人とは異なる口腔内バイロームが明らかとなった。この違いは縄文人の食生活の違いなどに由来すると推測される。この結果は国際学会にて発表され、成果が認められてポスター賞を受賞している。 上記と並行し、現代のウイルスの遺伝子を使ったウイルス進化解析系の確立を試みた。発現状態や機能などがわかっていないウイルス遺伝子同定とその発現状態を解析するために、翻訳状態を調べることのできるRibo-seqの系の確立を行った。系の確立に際して大腸菌を用い、大腸菌に感染するファージの遺伝子が同定できるか試験中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって縄文人の歯髄や歯石、糞石のサンプルの中から縄文人の体内に存在したウイルスが多数同定され、同定されたウイルス組成からバイロームが特徴付けられた。バイロームの特徴をより深く理解するために、バイローム中で見られるウイルス遺伝子の解析やウイルスの宿主である口腔内や腸内の最近の集団であるマイクロバイオームの解析を行う。これらの解析によって縄文人のバイロームと縄文人の食生活や生活習慣などとの関連性をより詳細に明らかにできると予想される。また、得られた縄文ウイルスのゲノムを用いて複数のウイルス種における系統解析を行い、進化を調べる。時間情報が含まれた古代のウイルスゲノムを系統解析に使うことによって、短期的なウイルス集団内の変化や宿主への適応などの影響を排除した長期的なウイルス進化過程を調べることが可能である。現在までにゲノムの全長が得られている古代ウイルスはヒトB型肝炎ウイルスなどごく僅かな病原性ウイルスに限られている。病原性のないウイルスも含めて多数の古代のウイルスを使って進化解析を行うことによって、ウイルス進化を病原性ウイルスに偏ることなくより包括的に調べることが可能だと考えられる。また、より多くの古代ウイルスに関する情報を集めるために現代を含む様々な年代の日本列島人の検体から全ゲノムシーケンシングデータの収集を行う。 上記と並行して現代のウイルスで遺伝子の同定と翻訳状態を調べ、ウイルス進化解析を進めるべく、Ribo-seqの系の確立を継続して行う。系の確立後には多数のウイルスをターゲットにし、複数種の宿主細菌株でRibo-seqを行い、ウイルス遺伝子の発現状態を調べる。また、得られた遺伝子で系統解析などを行ってその遺伝子の進化を調べる。
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[Presentation] Gut microbiome analyses of ancient individuals, so called “Jomon”, lived in Japanese archipelago2021
Author(s)
Luca Nishimura, Akio Tanino, Takafumi Katsumura, Kae Koganebuchi, Daisuke Waku, Masahiko Kumagai, Ryota Sugimoto, Naoko Fujito, Hiroki Oota, Ituro Inoue
Organizer
ASHG Virtual meeting 2021
Int'l Joint Research
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