2023 Fiscal Year Annual Research Report
休眠細胞の固体化した細胞質におけるシグナル伝達の解明
Project/Area Number |
22KJ1423
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
酒井 啓一郎 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞質流動性 / トレハロース / cAMP-PKA経路 / 発芽 / 胞子 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は様々なストレスに晒されると一時的に増殖を停止することが知られている。この現象は休眠として知られており、休眠した細胞は高いストレス耐性を獲得することで過酷な環境であっても耐え忍ぶことができる。休眠細胞は環境条件が良好になると再び増殖を再開する。休眠はこのような可逆的な増殖の停止として古くから知られているが、増殖の再開にどのような分子機構が働いているのかは、最も単純な真核生物の一つである酵母ですらほとんどわかっていない。本研究では、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの休眠状態である胞子をモデルとして、休眠からの目覚めの過程として知られる発芽を駆動する分子機構を解明することを目指した。近年、休眠中には細胞質の流動性が低下しており、つまり、細胞内の物質の拡散が強く制限されていることが報告されている。まず、蛍光性ナノ粒子である40nm-GEMを用いて細胞質の流動性を評価したところ、これまでの報告通り、休眠した胞子ではGEM粒子の動きが20倍程度低下していた。次に、GEM粒子の動きを発芽過程を通して観察したところ、粒子の動きが発芽の初期段階で急速に早くなることを発見した。さらに、粒子の動きがどのような分子機構によって制御されているのかを調べる目的で様々な遺伝子の変異体を用いて発芽中のGEM粒子の動きを観察した。その結果、発芽を誘導するために必要となるグルコースを感知する一連のシグナル伝達経路(cAMP-PKA経路)とトレハロースの分解経路が発芽中の細胞質の流動化に必要であることを遺伝学的に示した。実際にトレハロースは発芽の初期で急速に分解されていた。一方で、細胞質の流動性の制御に関与することが報告されていたグリコーゲンは細胞質の流動化後に分解されていた。よって、分裂酵母の発芽ではトレハロースが主に流動性の制御を担っていることが示唆された。
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