2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J22845
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
安田 匠 長岡技術科学大学, 技術科学イノベーション専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 電気自動車 / マルチポート変換器 / 急速充電 / 入力電力制御 / V2G |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の電気自動車の普及に伴い,高速な電気自動車の充電システムが求められている。特に,集合住宅においては,多数の電気自動車を同時に充電することができる大容量な電気自動車の充電システムが求められている。そこで本研究では,集合住宅に適した次世代大容量超急速マルチポート充電器の開発を行っている。検討システムは従来に比較して,システム体積とコストを低減しながら,従来のシステムの接続ポート数および電力容量の限界を突破できる。検討システムでは,各ポートへ所望の電力を供給するために入力電力制御が必要となる。しかしながら,これまでに検討されている入力電力制御では,ポート間の電力アンバランスが増加すると,電力供給ができなくなることが明らかになっている。したがって,電力アンバランスの程度にかかわらず各ポートへ所望の入力電力を供給できる制御方式について検討する必要があった。 2021年度は,新しい入力電力制御を提案した。提案制御によって,電力アンバランスの程度にかかわらず各ポートへ所望の入力電力を供給できることを確認した。加えて,提案するマルチポート充電器の高効率化を実現するため,入力電力制御の最適化を行った。まず,入力電力制御の性能を評価するための評価関数を提案した。提案した評価関数は,過去に検討されている入力電力制御に対しても適用することができ,きわめて汎用性が高い。提案した評価関数を用いて入力電力制御を最適化することによって,入力電力制御の高効率化を行った。そして,システムのミニモデルを用いて提案制御の妥当性を実験的に検証した。実験結果より,従来制御においては,入力電力制御が系統電流ひずみ率を悪化させることを確認した。これは系統の安定運用に悪影響を及ぼし,最悪の場合,停電につながる。一方で,提案制御を適用した場合には,系統電流が平衡した。つまり,提案制御の優位性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書における研究方法および研究内容では,2020年度において電力制御の確立を行う予定となっている。また,2021年度において,小型化および高効率化のための設計方針の確立を行う予定となっている。 2021年度には,マルチポート充電器の高効率化を実現するため,入力電力制御の最適化を行った。まず,入力電力制御の性能を評価するための評価関数を提案した。提案した評価関数は,過去に検討されている入力電力制御に対しても適用することができ,きわめて汎用性が高い。提案した評価関数を用いて入力電力制御を最適化することによって,入力電力制御の高効率化を行った。そして,システムのミニモデルを用いて提案制御の妥当性を実験的に検証した。実験結果より,従来制御においては,入力電力制御が系統電流ひずみ率を悪化させることを確認した。これは系統の安定運用に悪影響を及ぼし,最悪の場合,停電につながる。一方で,提案制御を適用した場合には,系統電流が平衡した。つまり,提案制御の優位性が示された。実験的に提案制御の優位性が示されたことによって,提案制御が実用化に耐えうるものであることが明らかとなっている。 従来では,提案するマルチポート充電器において,各ポート間に電力のアンバランスが発生した場合において,充電器に要求される動作が明確でなかった。2021年度に入力電力制御を提案することによって,ポート間の電力アンバランス時の充電器の動作を明らかにできた。その結果,提案する大容量超急速マルチポートEV充電器の設計指針の明確化を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,提案する大容量超急速マルチポートEV充電器の入力電力制御を提案し,実験的に動作を検証した。また,ポート間の電力アンバランス時の充電器の動作を明らかにし,提案システムの設計指針の明確化した。今後は,提案するシステムを用いてVehicle-to-Grid技術に関する検討を行う。 近年,発電電力が不安定な再生可能エネルギーの普及によって,系統側の安定運用が困難になっている。そのため,EVのバッテリを系統の安定化に利用するVehicle-to-Grid技術が研究されている。再生可能エネルギー源による発電電力が電力需要を上回った場合には,余剰電力をEVに充電する。一方で,電力需要が発電電力を上回った場合には,EVに蓄えられた電力を放出する。加えて,無効電力を電力系統へ注入することによって,再生可能エネルギーが大量導入された場合でも系統電圧を所望の値以内に制御することができる。 そこで2022年度には,提案するマルチポートEV充電システムを利用して,大容量のV2G技術の確立を行う。提案するマルチポートEV充電システムでは,多数のEVを同時に制御できるため,従来の小容量で分散されたEV充電システムに比較して,通信網を簡素化できる。一方で提案するマルチポートEV充電システムでは,各ポートへの入力電力制御と大容量V2Gを両立する必要がある。提案するマルチポートEV充電システムを用いて大容量V2G技術を確立することによって,再生可能エネルギー等の不安定電源の補償を行えるため,再生可能エネルギーの普及を促進できる。
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