2022 Fiscal Year Annual Research Report
フェレットを用いた大脳皮質線維連絡の特性と形成メカニズムの解析
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21J22608
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉野 真優子 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は高次脳機能の中枢であり、様々な神経変性疾患や発達障害などの病変の首座であることから、その形成を制御する分子メカニズムが注目されている。ヒトなど高等哺乳動物では大脳皮質が特に発達しており、大脳皮質の表面には脳回と呼ばれるシワが存在しており、また大脳皮質の神経線維連絡も著しく複雑化していると考えられている。脳回の存在や神経線維連絡の複雑化により、大脳皮質における高次脳機能の発達が可能になったと考えられている。従って、発生過程における脳回や神経線維連絡の形成メカニズムは重要な研究課題であるが、その実験的検証は遅れている。 本研究では高等哺乳動物の大脳皮質に特徴的に見られ、脳機能に重要な短連合線維であるU-fiberに着目し、大脳皮質が発達した哺乳動物フェレットを用いてU-fiberの特性と形成プロセスを解明することを目的としている。これまでにフェレット大脳皮質にもU-fiberが存在することを明らかにしてきた。またフェレット大脳皮質のU-fiber領域は、ヒトやサルのU-fiber領域と同様に髄鞘が発達しているという特徴があることを見いだした。現在、U-fiber領域を電子顕微鏡を用いて解析することにより、U-fiberの軸索と髄鞘の特性を解析している。さらに研究室で確立してきたフェレット大脳皮質への子宮内電気穿孔法を用いてU-fiberの形成プロセスの詳細を解析している。U-fiberは自閉症や統合失調症での異常が報告されていることから、本研究の成果は様々な疾患の病態解明につながるなど波及効果も大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次脳機能の中枢である大脳は進化の過程で著しく発達しており、高等哺乳動物における大脳の特性、形成や進化の分子メカニズムの解明は主要な研究課題である。例えば、進化の過程において大脳の神経線維連絡は著しく複雑化し、この複雑化は脳機能の発達に重要であると考えられているが、その詳細な特性や形成制御メカニズムには不明な点が多い。本研究課題では大脳皮質の短連合線維U-fiberに着目し、フェレット大脳皮質にもU-fiberが存在することを見いだした。さらにフェレットU-fiber領域は、ヒトやサルのU-fiber領域と同様に髄鞘が発達していることを明らかにした。フェレットの大脳の様々な領域から調整したサンプルを用いて髄鞘染色を行い、U-fiberの髄鞘の特徴を観察した。その結果、U-fiber領域の中には髄鞘染色で濃く染まる領域と薄く染まる領域の2つの領域が存在していることを見いだした。実際にこの2つの領域に大脳皮質由来の神経線維が含まれているかどうかを調べるために、軸索トレーサーであるコレラトキシンBサブユニット(CTB)を用いて解析を行ったところ、大脳皮質由来のCTB陽性線維が2つの領域の両方に分布していることを見いだした。現在、二つの領域の構造的特徴の詳細を解析するために、電子顕微鏡を用いた解析を進めており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
U-fiber領域には髄鞘染色で濃く染まる領域と薄く染まる領域の2つの領域が存在していることを新たに見いだしており、この二つの領域の構造的特徴の詳細を解析するために、電子顕微鏡を用いた解析を進めている。軸索径やミエリン厚に違いがあることを見いだしており、定量的解析の後に論文にまとめる予定としている。
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