2021 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanism of sensory integration and decision-making in higher brain centers
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21J40065
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木矢 星歌 金沢大学, 理工研究域生命理工学系, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-07-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経科学 / 即初期遺伝子 / 初期応答遺伝子 / 昆虫 / 性行動 / Hr38 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ショウジョウバエの性行動をモデルとして、多種の感覚を統合し行動を決定する脳の高次中枢神経機構を明らかにすることを目的としている。これまでに私は、昆虫の即初期遺伝子Hr38を利用して、ショウジョウバエで活動した神経をラベルする手法を開発した。この手法を用いて、aSP2と呼ばれる神経群が雄の性行動中に活動することを明らかにし、aSP2神経の働きが雄の求愛行動の持続と迅速な交尾達成に必須であることを見出した。 令和3年度は、カルシウムインジケータータンパク質GCaMP6fを発現するショウジョウバエを用いて、雄の性行動中のaSP2神経の活動をリアルタイムで解析するカルシウムイメージング解析を行った。具体的には、まずaSP2神経特異的にGCaMP6fを発現する雄を、フェロモン器官のある前脚を自由に動かすことができる半拘束状態にするために実験環境を最適化した。半拘束下の雄に対して雌を提示したところ、前脚が雌に触れた際にGCaMP6f蛍光強度の変化が観察された。今後はカルシウムイメージングによりaSP2神経の活動様態をより詳細に調べる予定である。 また、昆虫の別の即初期遺伝子Stripeの発現を用いて、異なる時間帯に行われた行動によって活動した神経を別個にラベルする手法についてこれまでに得られたデータを解析し、結果をまとめた論文の執筆を行った。本論文については2022年度中の発表を予定している。雄の性行動によってaSP2神経におけるStripeの発現が誘導されることから、aSP2神経が性行動中に活動することが再度示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠出産に伴う研究中断期間と、新型コロナウイルス感染症対策のため研究室における研究時間が当初の予定よりも制限された。その分、リモートでのデータ解析や論文執筆に注力し、研究には一定の進捗が見られたと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
感覚入力に対するaSP2神経の応答の解析 雄に複数の感覚刺激を同時に与えた際、aSP2神経の活動が相加的・相乗的に変化するかをカルシウムイメージングにより解析する。触角を除去した個体や、嗅覚・味覚受容体の変異体を利用したり、性フェロモン受容細胞にチャネルロドプシンを発現させたりすることにより、与える感覚情報を厳密にコントロールした状態で神経活動を記録する。また通常、求愛行動は数分間継続する。そこで数分間に渡って断続的に感覚刺激を与えた際に、感覚刺激に対するaSP2神経の反応の大きさが変化するかを解析し、行動との関連を調べる。次に、aSP2神経から性行動のコマンド神経であるP1神経への神経伝達がどのような伝達物質・受容体によって行われているのか、さらにaSP2神経の活動にP1神経がどう反応するのかを詳細に解析し、活動制御の実態を調べる。 aSP2神経によるP1神経の活動制御の解析 P1神経のカルシウムイメージングにより、aSP2神経からP1神経への機能的な接続の有無を検証する。機能的な接続が存在する場合、aSP2神経が活動した際にP1神経が活動すると予想される。そこで、aSP2神経を人為的に活性化した際のP1神経の活動を解析する。
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