2022 Fiscal Year Annual Research Report
高分子構造の精密制御に基づく新奇な機能性ポリ(フェニルアセチレン)材料の創出
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22J23236
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
越前 健介 金沢大学, 新学術創成研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ポリ(フェニルアセチレン) / テレケリックポリマー / ホスト–ゲスト / 超分子ポリマー / ロジウム触媒 / ジアゾエステル / ポリ(ジフェニルアセチレン) / らせんキラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者が最近開発したテレケリックポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類の精密合成法を活用して、PPA類を基盤とする超分子材料の開発に取り組んだ。高分子の両末端にいくつかのホストおよびゲスト分子を導入したテレケリックPPAを合成し、その超分子化による物性の変化を試験した。しかし、そのキロプティカル特性は超分子化しない場合と比べてほとんど増大せず、期待した成果は得られなかった。 一方で、我々が独自に開発したロジウム触媒によるフェニルアセチレン類のリビング重合において、ジアゾ酢酸エステルを停止剤に用いる新たな終末端官能基化法を開発した。既存の手法では反応の完遂までに24時間を要したのに対して、本手法では1時間以内に定量的に終末端が官能基化され、テレケリックPPA類が得られることを見出した。本反応は温和な条件で進行し、官能基許容性も高いことから、今後のPPA材料開発を大きく加速すると期待される。 上述の重合において開始剤として用いた(1Z,3Z,5Z)-ヘプタアリール-1,3,5-ヘキサトリエニル基を有するロジウム錯体は、ヘキサトリエニル配位子に由来するらせんキラリティーを持つことが分かっている。このロジウム錯体から誘導されるトリエン化合物は立体配置が明確にシスであるポリ(ジフェニルアセチレン)(PDPA)類のオリゴマーとみなすことができることから、構造について未解明な部分の多いPDPA類の構造に関する重要な知見を与えると期待できる。そこでいくつかの誘導体を合成したところ、1H NMRよりらせんキラリティーを持つことが確認された上に、いくつかの誘導体については予備的に光学分割にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時には、①超分子化学を活用したポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類の特殊構造体の構築とキラルマテリアルの開発、②PPA類と異種材料との複合材料の合成と特性評価、③生体適合性PPA類の合成と蛍光プローブへの応用、の3つの研究課題を設定しており、本年度はそのうちの①に取り組んだ。研究実績の概要で述べたように、テレケリックPPA類の超分子化には成功したものの、材料特性を向上させるには至らなかった。 一方で、新たなテレケリックPPA類の合成法として、ジアゾ酢酸エステルを停止剤に用いる高速末端修飾法を開発した。本成果は今後のPPA材料開発を大きく加速する重要な成果である。また、独自に開発したロジウム触媒から誘導したトリエン化合物が比較的安定ならせんキラリティーを持つことも見出しており、新しいキラル材料として有望である。 当初の研究計画については、現時点では期待した通りの成果は得られていないが、その過程で新たに生まれた2つの研究はポリアセチレン類の化学に関する重要な成果であることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類と、異種材料との複合材料の合成と特性評価を行う。はじめに最適な構造を探索するために多数のPPA類を合成する必要があるが、本年度に開発したジアゾ酢酸エステルを用いる終末端修飾法は多種多様な構造をPPA類の末端に迅速かつ定量的に導入できるため、効率よく検討を進めることができると考えられる。また、申請者が本年度に見出したらせんキラリティーをもつトリエン化合物について、さらなる構造解析および物性調査を行う。特に、光学分割条件を最適化し各エナンチオマーを単離する。その後、それらの光学特性を調べ、結果を学術論文としてまとめる。 本年度に取り組んだPPA類の超分子化の検討において、その物性は構造変化の前後でさほど大きく変化しないことが示唆された。そのような機能の限界がPPA類そのものの構造に由来する可能性もあるため、今後は、機能性材料開発を行うにあたってPPA類に類似した別のπ共役系高分子にまで研究対象を拡張することも視野に入れる。例えば、PPA類と類似の構造を持つポリ(ジフェニルアセチレン)類のほか、申請者が開発した触媒によって精密合成が可能だと思われるポリ(o-フェニレン)類の機能化を検討する。
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