2023 Fiscal Year Research-status Report
共役置換による連結および光による分解反応を鍵とするポリマー修飾法の開発と応用
Project/Area Number |
22KJ1489
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
赤江 要祐 信州大学, 繊維学部, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | ポリウレタン / AB型モノマー / 精密合成 / アシルアジド / Curtius転位反応 / イソシアナート / 自立膜 / 光分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は特に、AB型モノマーを用いたポリウレタンの精密合成法開発、および機能材料への応用について研究し、本研究が目指す機能性高分子・光分解性材料の開発を検討した。ポリウレタンは通常ジオールおよびジイソシアナートを用いてAA型とBB型モノマーの重付加反応によって合成される。この従来法では基本的にAA-BB連鎖が続き、より高度なシークエンス制御は困難である。高分子の一次構造制御は重要な研究分野であるものの、大きな進捗が見られるのは連鎖重合系である。これは、逐次重合は連鎖重合に比べて一次構造の制御が困難だからだと考えられる。しかしながら、ポリウレタンを含む逐次重合型のポリマーが広く社会に用いられている点を踏まえると、その精密合成法開発も重要な課題である。こうした背景から、研究代表者らは、AB型モノマーを用いたポリウレタンの新規精密重合法の開発に着手し、上記の課題解決を検討した。AB型モノマーを用いることでより高度な分子・材料デザインが可能となることが実験的に示唆された。また、本手法による高度な構造・物性制御に基づき、本研究が目指す機能性高分子・光分解性材料の開発を検討した。その結果、昨年度検討していた活性エステルを用いた高分子修飾反応よりも、より高効率的な合成手法が見いだされた。 研究代表者らは、AB型モノマーとして、イソシアナート基とアルコール基を両方含む化合物の前駆体である、アシルアジド化合物に着目した。アシルアジド基はイソシアナート基に比べて安定であるため、柔軟な分子デザインが可能である一方、加熱により生じるCurtius転位反応により、速やかに反応活性なイソシアナートに変換される。この性質を利用し、アシルアジド、およびアルコール基を両方含むAB型モノマーを種々合成し、その反応性・重合性・および生成ポリマーの物性を評価した。この方法に従い、新規光分解性高分子の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AB型モノマーを用いたポリウレタンの新規精密合成法開発について特に進展が見られたため。従来法では精密な構造制御が困難であったポリウレタンにおいて、本合成手法はより精密で柔軟な分子デザインを可能にすることが示唆された。その結果、ポリマーの構造・物性の制御が今までよりも高い解像度で実現可能となり、例えば光分解性・熱力学特性の制御について実際に本手法の有用性が示された。ポリウレタンは世界で最も生産されている高分子材料の1つであることから、本合成手法はサステイナブル材料、生体適合性材料等といった産業的応用も期待される。以上の状況を鑑みると、順調に進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる精密合成・物性制御を実現するため、新たな機能性モノマーの開発、および引き続き重合・材料物性についての基本的な知見の獲得を検討する。例えば、今までに開発されたAB型モノマーの共重合において、異なる反応性を有する官能基AおよびBの様々な組合せにより、共重合の振る舞いは大きく影響を受けることが示唆されている。こうした重合の基本的な知見を集めることで、よりシステマティックな分子デザイン・材用物性評価が可能となる。この点は従来のポリウレタン合成法と比べて本研究の大きな利点でもある。また、現在用いている光分解性モノマーは、結晶性の高さから高分子材料に組み込んだ際に材料が扱いにくくなるといった側面があるため、こうした点を改良した分子・材料デザインも検討する。
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