2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cancer metastasis inhibitor by selective control of adrenomedullin-RAMP2 and-RAMP3 systems
Project/Area Number |
21J40127
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 愛 信州大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アドレノメデュリン / リンパ節転移 / 血管恒常性維持 / 高内皮細静脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
アドレノメデュリン(AM)は多彩な作用を有するペプチド因子である。 我々は、AMとその受容体活性調節タンパクRAMP2が血管の発生に不可欠であり、AMとRAMP2のノックアウトマウスが胎生致死であることを報告してきた。昨年度までの検討から、誘導型血管内皮細胞特異的 RAMP2 ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)では、血行性転移のみならず、リンパ節転移も亢進することを見出した。DI-E-RAMP2-/-では、リンパ球を免疫応答の場であるリンパ節へと移行させる特殊な血管:高内皮細静脈(HEV)の内皮細胞が血管内腔に向かって剥離し、基底膜が肥厚するなどの形態異常を認めた。 本年度は、HEVに特異的なマーカーであるMECA-79に対する抗体を用いて、DI-E-RAMP2-/-のHEV描出を行った。DI-E-RAMP2-/-では、HEV数の有意な減少とHEV内にリンパ球が残存する様子が観察された。さらに、リンパ節を透明化処理し、3次元立体観察を行うと、DI-E-RAMP2-/-では、癌細胞がリンパ管ではなく、HEVに沿って浸潤、増殖する様子が観察された。次に、遺伝子発現の検討を行うと、DI-E-RAMP2-/-では、ICAMやL-selectinなどのリンパ球接着因子と、CCL19やCCL21などのリンパ球誘導ケモカイン発現が有意に低下していた。 一方で、リンパ管特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-LE-RAMP2-/-)を用いた同様の検討では、Controlに比較して、リンパ節重量に差を認めず、遺伝子発現の変化も差がなかった。これらのことから、血管の恒常性維持の破綻がリンパ節転移においても、血行性転移を促進する可能性が初めて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)を用いて、ルイス肺がん細胞のリンパ節転移の検討を行った。DI-E-RAMP2-/-では、原発巣のサイズがControlよりも小さいにも関わらず、リンパ節への転移が亢進する結果が得られた。DI-E-RAMP2-/-では、リンパ節内に存在する高内皮細静脈(HEV)が減少すると共に構造異常を生じており、FACSによる解析では、リンパ節におけるCD4+T細胞、CD8+T細胞の減少が確認された。さらにDI-E-RAMP2-/-のリンパ節では、HEVがリンパ球を誘引するためのケモカイン類や、接着因子の発現も低下していた。 一方で、血管内皮細胞特異的RAMP2過剰発現マウス(E-RAMP2 Tg)を使った検討では、自身の想定通りにDI-E-RAMP2-/-とは逆の結果が得られた。E-RAMP2 Tgではリンパ節転移は減少し、リンパ節内HEV数は増加していた。現在、詳細な解析を進めているが、AM-RAMP2系の活性化はリンパ節内HEV新生を誘導し、リンパ球を強制動員できる、新たなリンパ節転移抑制薬となる可能性が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年のNature誌において、癌免疫療法における「三次リンパ構造(TLS;tertiary lymphoid structures)」の重要性が提唱された。TLSはケモカイン、サイトカインによって媒介される炎症シグナルへの長期暴露時に、末梢組織で発生するリンパ系新生のことである。TLSが抗癌免疫に主要な役割を持つことが明らかとされ、癌におけるTLSは患者の予後と正相関することもわかっている。現在の免疫療法はキラーT細胞の再活性化によって癌細胞と戦うことを目的としており、実際に有用な患者はわずか20%にとどまっている。そこで、免疫療法、ワクチン、局所癌内薬剤などと併用してTLS形成誘導できた場合、免疫療法に対する感受性が上がることが期待される。中でも、TLS誘導に重要な因子の一つとしてHEVが挙げられているが、HEVを誘導する因子の同定には至っていない。本研究のデータから、AM-RAMP2系を活性化することでリンパ節内にHEVを誘導し、その結果TLSを誘導できる可能性が示された。次年度は、E-RAMP2 Tgを用いた解析を進める。AM-RAMP2系を活性化し、HEV数の増加誘導により、T細胞の強制動員が可能となるかFACSや遺伝子発現の解析を行う。また、透明化処理による3次元構造解析を進め、HEV局在と癌細胞の浸潤をトレースする。さらに、癌免疫療法との併用療法に対するAM-RAMP2系の治療効果の検討を進めていく。
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Research Products
(5 results)