2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規合成法を用いた糖脂質プローブの創製による細胞膜ドメインの構造解明
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22J12660
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高橋 舞菜 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / シアル酸 / ガングリオシド / グリコシド化 / 脂質ラフト / 分子観察 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①シアル酸含有スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)合成法の改良検討、および②肺・消化器系癌関連ガングリオシドの細胞膜上挙動の観察を実施した。 ①我々はこれまでに、従来のガングリオシド合成法の課題を克服した新たな手法として、糖脂質へのシアル酸の立体選択的導入反応を開発した。今年度は、本手法をさらに発展させるため、以下の2項目を検討した。 [合成終盤の脂肪酸導入]天然のスフィンゴ糖脂質は多様な脂肪酸構造を有する。しかし、既存の合成法では、脂肪酸構造が多様な糖脂質の効率的な合成が困難であった。その原因は、合成序盤に脂肪酸導入を行う経路にあったため、合成終盤に脂肪酸導入を行う経路を考案した。構造単純な基質を用いたモデル実験にて、新規合成経路の有用性を確認した。 [糖脂質受容体の反応性改善]鍵反応である糖脂質へのシアル酸導入は、糖脂質受容体の低反応性により、過剰量のシアル酸供与体を必要とする課題があった。そこで、糖脂質受容体の反応性に重要だと考えられる部分構造に着目し、水酸基の保護様式を検討した。その結果、糖脂質受容体の反応性が向上し、供与体の量を抑えた条件にて収率良く反応を行うことに成功した。 ②ラクト系列ガングリオシドの糖鎖末端に蛍光色素を導入したプローブを化学合成した。合成したプローブが天然に存在する糖脂質と同様の性質を有することを、2種類の評価試験により確認した。その後、蛍光プローブの1分子観察を行い、細胞膜ドメイン形成に関わる膜タンパク質との相互作用を初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存の合成法の課題解決のため、合成経路の変更と糖脂質ユニットの再設計を行い、狙い通り改善を行うことができた。これにより、2年度目には本研究の目標である多様な糖脂質プローブの開発を効率的に進めることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、癌細胞の転移に関与することが知られるネオラクト系列ガングリオシドプローブの化学合成を行う。本年度の研究成果を基に、脂肪酸鎖長を変えた誘導体の合成にも取り組む。 ネオラクト系列糖脂質の蛍光プローブは、ラクト系列と同様、評価試験を実施し、生細胞上での1分子観察を行う。更に、光照射により近接分子と架橋を形成する分子プローブも合成する。これにより、糖脂質が同一膜上で相互作用する未知の膜タンパク質を同定し、細胞膜ドメインの構造を明らかにする。
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Research Products
(5 results)