2022 Fiscal Year Annual Research Report
三次元周期構造制御した高エントロピー合金の創製とその損傷メカニズムの解明
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22J12806
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤田 佳佑 静岡大学, 自然科学系教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 金属疲労 / 粉末冶金 / 疲労き裂伝ぱ / 高エントロピー合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高エントロピー合金(HEA)を対象に,HEA本来の優れた力学特性を維持したまま高強度・高延性化を達成するとともに,HEAの疲労破壊抑制指針を確立する.金属材料の高強度化手法として,ミクロ組織の均一微細化が有効とされている.しかしながら,HEAの場合,特異な力学特性の根幹をなす双晶変形が生じにくくなるため,ミクロ組織の均一微細化はHEAの高機能化にとって有用ではない.そこで,粉末冶金技術を駆使し,オーステナイト系ステンレス(SUS)とHEAの三次元周期構造を有する金属材料を創製することした. 具体的には,異なる直径を有する2種類の粉末を混合・焼結することで,焼結体内部の金属組織を周期的に変化させることが可能であることを確認した.また,粉末混合割合を変化させることにより,周期構造の形態を制御できることも明らかにした. また,三次元周期構造を有する金属材料の力学特性におよぼす微視組織の影響について検討を加えるため,準静的な引張試験および疲労き裂伝ぱ試験を行った.その結果,周期構造材の引張特性のほとんどはHEAとSUSの複合則に従って変化することが明らかとなった.ただし,HEAが連なったネットワークを30%有する材料の破断伸びは,複合則と比較して優れた値を示した.疲労き裂伝ぱ特性について,周期構造材料のき裂伝ぱ抵抗はSUS由来の高い抵抗値に起因してHEAと比較して上昇するが,き裂開閉口の程度はHEAと比較して低下した.その結果,周期構造材の「みかけ」の抵抗値はHEAと同等であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた通り,粉末の混合によって金属材料の微視組織制御が可能であることを明らかにするのみならず,各種力学特性に及ぼす三次元周期構造制御の影響評価にも着手しているため,本課題は「おおむね順調に進展している」といえる. 現時点までに,周期構造材の引張強さおよび0.2%耐力は複合則に従ったが,HEAがネットワーク状に連なる周期構造材の破断伸びは複合則と比較して高く,SUSがネットワーク状に連なった周期構造材の破断伸びは複合則と比較して低いことを明らかにした.このことから,HEAがネットワークとなった周期構造材が優れた引張特性を有していることが示された. さらに,HEA30%材において,疲労き裂は主にSUS内部を進展するため,SUS由来の高い疲労き裂伝ぱ抵抗により,材料本来の抵抗値は上昇する.そのため,き裂開閉口が生じない高試験力比の条件下で優れた疲労き裂伝ぱ特性を示すことを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様,微視組織を三次元的に周期構造制御した金属材料を作製し,金属材料の損傷メカニズムを解明する. 具体的には,高輝度放射光施設において放射光回折コントラストトモグラフィ(Diffraction contrast tomography: DCT)を用いたミクロなミスオリエンテーションの変化挙動や,CTイメージングによるマクロなき裂発生を観察することにより,様々なスケールで周期構造材料の損傷形態を調査する.さらに,X線応力測定装置とその場疲労試験機を組み合わせた疲労試験を行うことにより,準静的な損傷挙動と繰返し負荷による損傷挙動の際を明らかにする. さらに,異なる合金粉末の混合だけでなく,元素添加を利用した周期構造制御したHEAの作製と力学特性の評価を実施する予定である.種々の周期構造材の力学特性の比較・検討を通して,HEA本来の優れた力学特性を維持したまま高強度・高延性化を達成するとともに,HEAの疲労破壊抑制指針を明確化することを目標とする.
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Research Products
(11 results)