2021 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン共役電子移動の特性解明を実現する電子状態計算法の核座標微分開発
Project/Area Number |
21J20614
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯野 翼 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 密度行列繰り込み群 / 多参照理論 / 電子状態理論 / プロトン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な電子状態を擁するプロトン共役電子移動(PCET)反応の解析手法として,大規模な活性空間を効率的に扱える密度行列繰り込み群(DMRG)法に基づいた電子状態計算SA-DMRG-CASSCF法のエネルギー核座標微分の開発を進めてきた。繰り込み基底に由来する一次応答を無視した近似的なエネルギー核座標微分は理論開発を終え,SA-DMRG-CASSCF法においては繰り込み基底の数が大きい極限でSA-CASSCF法のエネルギー核座標微分に漸近する解を与える。一方で厳密なエネルギー核座標微分に関しては,主に多状態計算に由来する繰り込み基底の構築方法に起因して,DMRG法における既存の一次応答理論では計算が困難であることが判明した。初年度はこの問題を解決するため,一次応答を変分的に決定できるLagrangian-basedな定式化に新たに取り組んだ。本定式化においては,DMRG法の各パラメータに依存関係が存在するため,DMRGアルゴリズムで得られる収束後の仮想的な波動関数をすべてLagrangianに含めて計算しなければならない。しかし各パラメータの一次応答は自己無撞着的に計算する必要がなく,そのため格段に収束しやすいといったメリットをもっている。また,開発中のDMRG法プログラムの実装は,効率的な計算アルゴリズムと並列化を前提にした組み立てを行なっているため,高速な電子状態計算が可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存の一次応答理論に基づくDMRG法のエネルギー核座標微分が収束解を与えない原因を突き止めるために半年間ほど費やした。また,代わりとなる新規のエネルギー核座標微分理論を定式化したものの,当初想定していた組み立てより複雑なアルゴリズムとなっているためにプログラム実装が予定より遅れている。しかし,理論研究の副次的な産物として,10年以上明らかでなかったSA-DMRG-CASSCF波動関数の数理的な性質がいくつか判明もした。双方の観点から,本研究の達成度は「やや遅れている」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は開発が遅れているエネルギー核座標微分の実装,および部分的な近似による計算精度と計算速度のトレードオフの検証を想定している。また,PCET反応の非断熱性や反応速度定数を,TVCFと呼ばれる解析手法をベースとして計算できるか検証していく予定である。
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