2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J20987
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 真理 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ヒメツリガネゴケ / キネシン / 微小管 / オルガネラ輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物におけるオルガネラ輸送メカニズムを研究するため、ヒメツリガネゴケにおいて核の位置決定に重要なプラス端方向性キネシンARKに着目した。RNAiを用いた以前の研究よりも完全な機能欠損変異体を得るために、CRISPR/Cas9システムを利用してARK変異体を新たに樹立した。予想に反して、ARK変異体は深刻な成長異常の表現型を示した。細胞レベルでの解析をおこなったところ、ARKは核だけでなく、葉緑体、ミトコンドリアなどの巨大なオルガネラや、分泌小胞の動きや配置に関わることがわかった。これらは、微小管上への結合能力は保持するが歩行能力を失うポイントミューテーションを導入した変異ARKではレスキューされず、オルガネラの配置はARKの歩行活性に依存するメカニズムで決定されていることが示唆された。加えて、タンパク質-タンパク質相互作用の機能を持つとされるARMリピートを持たない変異ARKは表現型をレスキューしなかったため、ARKがテール領域のARMリピートによって積荷の認識と結合を行なっていることが推測された。さらに、他の生物種のキネシンではほとんど見られない、ARK独自のモーター領域のN末端側の100アミノ酸程度の領域を失った変異コンストラクトでは、in vivoの歩行距離が減少していた。つまり、このN末端領域はARKの長距離歩行を補助する機能を持つことが示唆された。まとめると、ARKは多様な積荷を輸送する、ユニバーサルなトランスポーターであることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたように、巨大オルガネラの輸送に関しては、ARKの機能について大まかな全体像を掴んだ。さらに、昨年度の目標であったARKの持つ4つの機能ドメインの役割を明らかにした。加えて、ARK変異体は成長異常も示すことを発見した。この予想外の表現型はARKの果たす役割がオルガネラ輸送だけでは無いという、興味深い可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ARK変異体で見つかった成長異常や細胞形態異常に焦点を当て、解析をおこなっていく予定である。既知の先端成長や形態形成に重要な役割を持つ因子(植物Rhoホモログ、アクチン調節タンパク質など)の局在や機能のスクリーニングをARK変異体において行う。異常を示す因子を発見した場合は、ARKによる輸送がどのようなメカニズムで関与しているのかを、遺伝学や生化学的な手法を用いて調査する。
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Research Products
(1 results)