2021 Fiscal Year Annual Research Report
Rational design and efficient synthesis of non-hexagonal nanocarbons
Project/Area Number |
21J22475
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 圭悟 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 含七員環化合物 / 多環芳香族化合物 / パラジウム触媒 / 分子ナノカーボン / π拡張反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
五、七、八員環など、六員環以外の芳香環を含むナノカーボンは「非ヘキサゴナルナノカーボン」と呼ばれ、バッキーボウル、π拡張アズレン、ワープドナノグラフェン、[8]サーキュレンなどが代表例として知られている。これらの分子は非ヘキサゴナル環に起因する湾曲構造や一次元パッキング構造、芳香族・反芳香族性、導電性、磁性、光学活性などにより、構造有機化学や材料科学など様々な分野で注目を集めている。しかしながら、非ヘキサゴナル骨格はその構築自体が難しく、効率的に非ヘキサゴナルナノカーボンを得ることが困難である。このような理由により非ヘキサゴナルナノカーボンの実用化並びに物性解明が大きく妨げられている。特に七員環を含む非ヘキサゴナル芳香環の構築は、酸化的脱水素環化反応や七員環骨格を有する基質を出発物質とする方法などに限られている。現在、多種多様な構造をもつ含七員環ナノカーボンの自在合成法は確立されているとは言えず、新たな効率的七員環骨格構築法の開発が望まれている。また、五員環や中員環骨格の効率的構築手法を合わせて開発することができれば、非ヘキサゴナルナノカーボン化学の発展を一気に加速できる。そこで今年度本研究員は、パラジウム触媒を用いた分子内C-H/C-Brカップリングによる七員環構築法を開発した。ベンジルブロモビフェニル誘導体をシクロペンチルメチルエーテル(CPME)中、塩化パラジウム、トリフェニルホスフィンおよびテトラメチルアンモニウム酢酸塩(TMAOAc)存在下、140℃で加熱撹拌することで、トリベンゾシクロヘプタンが高収率で得られた。本反応において、五員環化合物は検出されなかった。この反応系は基質適用範囲が広く、様々な多環芳香族炭化水素骨格やフェロセン、ヘテロ原子、ヘテロ芳香族骨格を有する化合物に本反応が適用可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究員は今年度、パラジウム触媒分子内環化反応による新規七員環構築法を開発した。本研究成果はこれまで合成困難であった多数の芳香環が縮環した含七員環化合物を適切な触媒および配位子を用いることで簡便に合成可能にした点で意義深い。さらに本反応を用いて二つの七員環を有する化合物の合成にも成功した。本研究を通じて得られた知見は他の遷移金属を用いた新しい反応形式の七員環構築反応、加えてより大きな含中員環化合物の合成へと応用可能であるため、今後の研究における大きな指針になると考えられる。 また、本研究員は上記の研究成果に加えて、含七員環多環芳香族化合物に関する総説を他の研究員と共同で書き上げた。本総説は含七員環骨格構築法だけでなく、含七員環化合物がもつ物性にも焦点を当てており、含七員環化合物の合成から物性までを網羅している。 以上のように予定通り初年度で七員環骨格構築法の開発を滞りなく行えており、順調な進捗であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度達成した七員環構築において得られた知見をもとに、他の含七員環化合物の合成を行う。さらに合成された含七員環化合物の芳香族化反応も並行して行い、全てがsp2炭素になった含七員環化合物を合成する。さらに本反応における反応機構の詳細な解析を行う。また異なる含七員環骨格構築法として縮環π拡張(APEX)反応による中員環構築法の開発に挑戦する。これまで開発されてきたパラジウム触媒によるAPEX反応をもとにビス(2-ヨード-1-フェニル)メタンなどの中員環構築剤を調整し、PAHの二重結合性の高いK領域への反応や、メチルトリアゾリンジオン(MTAD)による脱芳香族化を経たM領域への反応を検討する。本手法の開発は未官能基化芳香族化合物に対し一段階で七員環や中員環骨格を与える画期的な手法となり得る。開発した上記反応を応用して連続的・逐次的な未踏非ヘキサゴナルナノカーボンの精密合成を随時行う。合成された非ヘキサゴナルナノカーボンは既存のPAH系有機電子材料にはない構造をもっており、従来の有機電子材料よりも優れた成膜性、発光特性、電荷輸送特性を示す可能性を秘めている。合成された化合物群は有機電子材料への適応を見据えて成膜及び性能評価を随時行う。
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Research Products
(3 results)