2022 Fiscal Year Annual Research Report
DNA-金属錯体複合触媒を用いた電気化学的な二酸化炭素還元反応の開発
Project/Area Number |
22J14000
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
若林 拓 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | ハイブリッド触媒系 / 二酸化炭素 / 電気化学的反応 / 金属錯体触媒 / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はDNAと金属錯体からなるハイブリッド触媒系を新規に開発するものである。従来の触媒系では金属錯体周辺の配位環境を厳密に制御することは困難であったのに対し、本触媒系はDNAの周期的構造を利用することによって、金属錯体の固定位置、周囲の第二配位圏の環境を厳密に制御することを狙っている。従来系は金属錯体と固体半導体の組み合わせが多いが、この系では金属錯体周辺における分子レベルの制御が困難である。一方、本研究はDNAと金属錯体からなるハイブリッド触媒系の創出を目指している。DNAを用いることで導電性を確保しつつ、金属錯体の第二配位圏の環境を制御することが可能となる。この仮説のもと、本ハイブリッド触媒系はDNAの導電性を利用した電気化学的な触媒反応に供することを想定している。申請者の研究室では電気化学的な二酸化炭素還元反応の開発を行っている。申請者はここで培った知見をもとに、本ハイブリッド触媒系を用いた二酸化炭素等の小分子変換反応開発に取り組んでいる。 本年度はイリジウム、ルテニウム、鉄をそれぞれ含む金属錯体を新たに開発し、可視光照射下においてこれらが二酸化炭素還元反応に対して優れた触媒活性を示すことを見出した。類似の配位子を用いているのにも関わらず、中心金属の種類によって生成物選択性や触媒の性能・耐久性が大きく変化することは特筆すべき点である。本研究結果はすべて査読を経て国際論文誌に既に掲載済みである。今後は本金属錯体を用いてハイブリッド触媒系を創出し、狙いの電気化学的な二酸化炭素還元反応に応用することを想定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は触媒反応に対して活性を示しうる金属錯体触媒の開発、それを含む人工DNA鎖の合成、合成したハイブリッド触媒系の電気化学的反応への応用の3ステップからなる。現在のところ、申請者はイリジウム、ルテニウム、鉄をそれぞれ含む金属錯体を新たに開発し、可視光照射下においてこれらが二酸化炭素還元反応に対して優れた触媒活性を示すことを見出している。類似の配位子を用いているのにも関わらず、中心金属の種類によって生成物選択性や触媒の性能・耐久性が大きく変化することは特筆すべき点である。本研究結果はすべて査読を経て国際論文誌に既に掲載済みである。 全体としては3分の1が完了したことになるが、2ステップ目の人工DNA鎖の合成はある程度方法が確立されている。すなわち、金属錯体触媒を含むヌクレオチドの合成に成功すれば、これをDNA自動合成機に供することで様々な塩基配列を有する金属錯体ーDNAハイブリッド触媒を合成できると想定している。また、3ステップ目の二酸化炭素還元反応を試行する電気化学反応は当研究室にて手法が確立されているため、ハイブリッド触媒が開発でき次第すぐに取り掛かることができると想定している。以上のことを鑑み、本研究課題は予定よりもやや遅れているが、実施期間内に完了する可能性はあると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、まず本年度に開発した二酸化炭素還元反応のための金属錯体触媒をヌクレオチド骨格に取り込み、続いてこれをDNA自動合成機に供することで金属錯体ーDNAハイブリッド触媒を開発する。これを電極触媒として電気化学反応に用いることで、二酸化炭素電気還元反応を試行する。 金属錯体触媒を有するヌクレオチドの開発は有機化学的な合成手法に基づいて行う。申請者の属する研究室では配位子骨格上にエステル基を有する金属錯体がすでに開発されているため、この官能基を足がかりにヌクレオチド骨格の導入を行う予定である。この過程において合成化学的な問題が起こる可能性があるが、当研究室が蓄積している知見に基づいてその都度解決する心づもりである。合成した金属錯体ーヌクレオチドはホスホロアミダイト法を適用することでDNA自動合成機によって金属錯体ーDNAハイブリッド触媒へ変換される。合成したハイブリッド触媒はDNAに由来する電動性を有しているため、そのまま電極として電気化学反応に供することが可能である。ハイブリッド触媒電極をカソードとして、水酸化触媒電極をアノードとしてそれぞれ二酸化炭素を含む電解液に浸し、両電極間に電圧を印加することによって電気化学的な二酸化炭素還元反応を試行する。記録された触媒活性に応じて、金属錯体の構造、DNAの塩基配列、電解槽の条件検討をそれぞれ行う。
|
Research Products
(5 results)