2022 Fiscal Year Annual Research Report
収束的One-potペプチド連結による長鎖タンパク質超高効率化学合成法の確立
Project/Area Number |
22J15709
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中津 幸輝 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質化学合成 / Fmocペプチド固相合成法 / ネイティブケミカルライゲーション(NCL) / システイン保護基 / one-potペプチド連結法 / ペプチドチオエステル / 2,5-ジケトピペラジン / 非天然型プロリン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質を有機化学に合成する「タンパク質化学合成法」を効率化する新規手法の開発を目的としている。特に、その過程でも最も重要なペプチド同士の連結ステップにおける効率化を指向して、高効率ペプチド連結法の開発と新規チオエステルペプチド合成手法の開発に取り組んでいる。 具体的には、前者については新規システイン保護基の開発により、チオエステル前駆体のチオール基において新規アリル系保護基をかけることでN-to-C方向(N末端からC末端方向へ)でのone-potペプチド連結法を確立した。さらには特別研究員採用前に開発し、2022年度に学術論文として発表したC-to-Nペプチド連結法(K. Nakatsu et al., Angew Chemie 2022)と上記の手法に直交性があることを見出し、これらの手法を組み合わせた連結方向切り替え可能なone-potペプチド連結法の開発に成功した。one-potでの反応系中で連結方向を切り替えられる手法は過去に報告例がなく、初の例となる。この手法を用いて、ジユビキチン化ヒストンH3の化学合成を達成した。本手法は今後さまざまなタンパク質の化学合成おいて適用され、合成過程の効率化が望まれる。 後者については非天然型プロリン誘導体を用いたタグ修飾ペプチドチオエステルの効率合成法の開発に取り組んだ。ペプチドチオエステルはペプチド連結反応の鍵となるアシルドナーである。その前駆体の一種であるCys-Pro-脱離基型チオエステル前駆体において、非天然型プロリン誘導体である種々のγ位修飾型プロリンを用いることで、2,5-ジケトピペラジン形成反応を介したチオエステル化効率を大幅に向上させることに成功した。さらには親水性タグなどの機能性タグを簡便に導入することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の収束的one-pot連結法の開発とは異なるが、二種類のone-potペプチド連結法を組み合わせ、新型の連結方向切り替え可能なone-potペプチド連結法の開発に成功している。今までの類似研究では、単一方向でのone-potペプチド連結しか達成されたことはないために、本手法は概念としても新規性・独自性があると言える。また、実際の合成ターゲットタンパク質を用いた手法の実証実験にも成功しているので、概ね順調であると言える。 さらに、研究計画には記載していなかった、非天然型プロリンを用いたCys-Pro-脱離基型チオエステル前駆体の開発にも成功しており、以前のチオエステル化効率を大幅に向上させたと同時に、Fmocペプチド固相合成で簡便に親水性タグを導入を可能にしている。本手法は疎水性の高いペプチド断片の合成に有用であると考えられる。 よって、当初の計画以上にさまざまな新規手法の開発に成功していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、今年度は昨年度までに実施した「新規システイン保護基開発によるone-potペプチド連結法」と「非天然型プロリン誘導体を用いたタグ修飾ペプチドチオエステルの効率合成法」の更なる検証とその成果の発表に注力する。 前者については昨年度までに、アリル基を有する新規保護基の開発とそのone-potペプチド連結法への使用、更には概念としても新規性がある連結方向可変型one-potペプチド連結法によるジユビキチン化ヒストンH3の合成が完了している。これら成果を研究論文として発表するため、追加実験を行う予定である。 後者については昨年度までの研究でCys-Pro-脱離基型のチオエステル前駆体において、非天然型プロリン誘導体であるγ-修飾型プロリンを用いることでタグ修飾型チオエステルペプチドの効率合成を達成している。今後は、これら誘導体を用いることによるチオエステル化反応の加速機構の解明のために計算化学的アプローチを取る予定である。また、この新規手法を用いることで親水性タグを連結させたチオエステルペプチドを合成し、実際のタンパク質を合成標的に据えて全合成を達成する予定である。さらに、後者の研究をタグ付きセレノエステル合成法へと適用するため、セレノシステイン(Sec)を用いたSec-Pro-脱離基型のセレノエステル前駆体の開発にも取り組む予定である。
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