2022 Fiscal Year Annual Research Report
ミューオンg-2/EDM精密測定に向けたミューオン線形加速器高速部の開発
Project/Area Number |
22J20870
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鷲見 一路 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ミューオン / ミュオン / 異常磁気能率 / 電気双極子能率 / 線形加速器 / ディスクロード型加速管 |
Outline of Annual Research Achievements |
室温程度まで冷却した超低速のミューオンを加速して得る低エミッタンスビームを用いた新手法によるミューオンの異常磁気能率(g-2)と電気双極子能率(EDM)の精密測定を実現するため、この手法の鍵となるミューオン加速技術の実現を目指している。 2022年度は、線形加速器高速部に用いるミューオン用円盤装荷型加速管(DLS)の開発に注力し、高周波源とDLSとを繋ぐカプラーの設計、カプラー部分での電磁場分布のビームダイナミクスへの影響推定、試作機の高周波特性評価を行った。 カプラー設計では、KEK 電子陽電子入射器の構造を参考に開口部等の寸法調整を行い、結合度と共振周波数を合わせて移相誤差を1 deg.以下に抑制できることを3次元電磁場解析で示した。また、そこで得た電磁場分布を用いてビームダイナミクスを計算し、カプラーで開口部の影響により生じる電磁場の非対称性がエミッタンスに影響を及ぼす可能性が低いことを示した。ただし、そもそも高速部で必要な電場強度が大きく、エミッタンスが増加しやすい傾向があることを発見したため、ビーム光学系の設計変更も行った。 試作機は全セルが同じ寸法の定インピーダンス型の基準管とカプラーで構成され、いずれも上記の電磁場解析による設計をもとに実際にカプラー部分を製作したものである。基準管については、セル間の結合度が3桁の精度で設計と一致することを示し、共振周波数はピークピーク値で50 MHz以下の精度まで調整できることが明らかとなった。また、Q値や軸上電場強度の実測結果も揃えている。カプラーについては、Kyhl 法による調整でカプラー離調時と隣接空洞離調時の位相差を1 deg.以下に抑制したが、Nodal shift 法では周波数を合わせた基準管で移相のずれが見えた。以上のように、試作 によって製作過程で生じる誤差や調整手法の課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミューオン加速用DLSのカプラー周りの詳細な高周波設計とビームダイナミクス設計の改善を行い、試作が可能な段階まで進行した。試作機の高周波特性には上記のように課題もあるが実機製作に活かせる結果を得られており、課題解決に向けた研究を遂行すれば高速部の実現に大きく近づける段階にある。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
試作結果については更に精査する必要がある。Q値やシャントインピーダンスの設計値とのずれの原因を再測定を通して解明するとともに、カプラーの移相測定で見えた移相のずれについてDLSを多数の共振回路に見立てた等価回路上でカプラーの状態を変えながら現状把握を行う。 また、DLSの共振周波数やQ値等のずれ、カプラー調整誤差、入力電力の不定性等を加味した誤差評価を行うために、過渡解析が可能な等価回路モデルの構築も現在進めている。現在は過渡応答を確認しており、正しい時間・電力スケールで解析が可能なコードを構築したことを示している。今後は、2次元電場解析の結果を解釈した場合の加速勾配分布との比較を行い、ビームダイナミクスへの影響を評価していく。
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