2022 Fiscal Year Annual Research Report
小脳神経回路を介した恐怖応答学習のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22J22387
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小山 航 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 小脳 / 能動的回避学習 / ゼブラフィッシュ / カルシウムイメージング / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、恐怖応答学習における小脳の役割について、神経回路レベルで明らかにすることを目的としている。私はこれまでに、小脳特異的に機能阻害したゼブラフィッシュ成魚において、能動的回避学習が確立しづらくなることを明らかにしてきた。 初年度である本年度は、頭部固定条件下のゼブラフィッシュ成魚に対し能動的回避学習実験を行い、その間の小脳プルキンエ細胞樹状突起のカルシウム(Ca)イメージングを実施した。その結果、罰刺激(電気ショック)に条件付けられた光刺激に対し応答する樹状突起グループと、その条件刺激を回避したタイミングで応答する樹状突起グループが、学習依存的に出現することを見出した。また、罰刺激を回避できなかった試行において、罰刺激を受ける直前にプルキンエ細胞の活動レベルが経験依存的に低下することが確認された。現在これらの現象の再現性を検証している。 また、これらの学習依存的な応答を光遺伝学的に操作することを目標に、光遺伝学ツールの開発を進めた。これまでに、GPCR型ロドプシンであるSpiderRh1や、陽イオンチャネル型ロドプシンのGtCCR4が、ゼブラフィッシュ神経細胞で機能的に発現することを明らかにしてきた。本年度は、車軸藻由来のチャネルロドプシンKnChRが、ゼブラフィッシュ神経細胞で機能的であることを明らかにし、KnChRが小脳神経細胞特異的に発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ系統を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、恐怖応答学習実験をゼブラフィッシュ仔魚に対して実施する予定であったが、想定よりも学習率が低いことが明らかとなった。そこで方針を変更し、理化学研究所の岡本仁チームリーダーらが確立した、成魚に対する能動的回避学習実験を実施した。結果、十分な学習効率を示すとともに、恐怖応答学習中の小脳プルキンエ細胞のCaイメージングデータを取得することに成功した。現在、そのイメージングデータの解析と、再現性を確認する段階にある。 また、採用2年目から実施予定であった、「恐怖応答学習中の小脳神経活動の光遺伝学的な操作」に向け、小脳神経細胞特異的に光遺伝学ツールが発現するトランスジェニック系統を樹立した。 また、新たな展開として、小脳で処理された恐怖応答学習の情報がどの脳領域に投射されるのか明らかにするため、ゼブラフィッシュ小脳の出力細胞である、eurydendroid細胞の機能解析を開始した。 当初予定していた研究計画通りではないものの、それに代わる研究計画を実施しており、次年度以降の研究計画も進んでいるため、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.恐怖応答学習における小脳プルキンエ細胞の神経活動計測: 初年度に引き続き、恐怖応答学習中の小脳プルキンエ細胞のCaイメージングを実施する。条件刺激や遊泳行動と、プルキンエ細胞応答の関係を解析し、その背後に潜む恐怖応答学習における小脳の情報処理機構に迫る。 2.恐怖応答学習における小脳神経細胞内セカンドメッセンジャーの役割解明: これまでに細胞内2次メッセンジャーを光操作できるチャネル型ロドプシンやGPCR型ロドプシンの開発を進めてきた。これら光遺伝学ツールにより、恐怖応答学習中の小脳神経細胞内シグナル伝達に介入し、光刺激依存的な恐怖応答学習の誘導、阻害を試みる。 3.恐怖応答学習における小脳からの情報投射先の解析: ゼブラフィッシュにおける小脳の出力細胞である、eurydendroid細胞に対する恐怖応答学習中のCaイメージングにより、学習に関与するeurydendroid細胞群を探索する。photoconversionの特性をもつ蛍光タンパクKaedeによりこの細胞群を標識し、その投射先を解析する。
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[Presentation] Optogenetic control of intracellular second messengers in neurons and heart muscle cells2022
Author(s)
Wataru Koyama, Hanako Hagio, Aysenur Deniz Cayirtepe, Shiori Hosaka, Janchiv Narantsatsral, Koji Matsuda, Takashi Shimizu, Mitsumasa Koyanagi, Shoko Hososhima, Satoshi P. Tsunoda, Akihisa Terakita, Hideki Kandori, and Masahiko Hibi
Organizer
17th International Zebrafish Conference
Int'l Joint Research
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[Presentation] Novel optogenetics tools work efficiently in neurons and myocardium in zebrafish2022
Author(s)
Wataru Koyama, Hanako Hagio, Shiori Hosaka, Aysenur Deniz Cayirtepe, Janchiv Narantsatsral, Koji Matsuda, Takashi Shimizu, Mitsumasa Koyanagi, Shoko Hososhima, Satoshi P. Tsunoda, Akihisa Terakita, Hideki Kandori, and Masahiko Hibi
Organizer
第28回 小型魚類研究会
Int'l Joint Research