2023 Fiscal Year Research-status Report
小脳神経回路を介した恐怖応答学習のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ1601
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小山 航 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 小脳 / ゼブラフィッシュ / 能動的回避学習 / カルシウムイメージング / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、能動的回避学習における小脳機能をゼブラフィッシュを用いて解明することを目的とする。能動的回避学習中の小脳ニューロンの活動をCa2+イメージングにより解析するため、バーチャルリアリティ(VR)空間において、顕微鏡下で頭部を固定したゼブラフィッシュ成魚個体に対し、能動的回避学習を行う実験系を導入した。このVR空間において、個体は電気ショック(US)とそれに連合付けられた特定の周囲の色(CS)の関係を学習し、CSに対して逃避行動を取るように訓練される。小脳において情報統合の役割を果たすプルキンエ細胞の神経活動を学習中に取得し解析したところ、CSの提示とCSからの逃避が完了したタイミングで、学習依存的に神経活動量が上昇することが明らかとなった。また、真骨魚類においての小脳から他の脳領域への出力を担うニューロンである広樹状突起細胞の活動を解析したところ、CSに応答するニューロン群(危険ニューロン)と、CS以外の周囲の色に応答するニューロン群(安全ニューロン)が学習依存的に出現することが明らかとなった。 また、以上の研究テーマと並行し、近年特性が明らかにされた様々な新規光遺伝学ツールの有用性をゼブラフィッシュにおいて検証した。各ツールを網様体脊髄路ニューロンに発現させた際の光刺激によるな遊泳応答と、心筋細胞に発現させた際の光刺激による心拍停止の効果を計測することにより、ツールの機能性を評価した。結果、カチオンチャネル型ロドプシンのGtCCR4、KnChR、細胞質中のcAMPやcGMPを上昇させる酵素共役型光遺伝学ツールOaPAC・bPAC・BeGC1、Gq型GPCRロドプシンのSpiRh1、SpiUV、Gi/o型GPCRロドプシンのMosOpn3、PufTMT、LamPPなどがゼブラフィッシュにおいて機能的に発現し、有望なツールであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、能動的回避学習中のゼブラフィッシュにおける小脳の神経活動を細胞腫ごとに取得することに成功した。また、カチオンチャネル型ロドプシンのGtCCR4、KnChR、酵素共役型光遺伝学ツールOaPAC・bPAC・BeGC1、Gq型GPCRロドプシンのSpiRh1、SpiUV、Gi/o型GPCRロドプシンのMosOpn3、PufTMT、LamPPなどがゼブラフィッシュにおいて機能的に発現し、光遺伝学ツールとして有望であることを見出し、2報の原著論文として発表した。次年度中に本研究をまとめられる予定であるため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出された、能動的回避学習に関連する小脳の活動をさらに詳細に解析する。広樹状突起細胞のうち、「安全ニューロン」と「危険ニューロン」が投射する脳領域をエレクトロポレーション法により標識する。また、小脳内で行われる情報処理を明らかにするため、プルキンエ細胞を細胞死させた個体において、広樹状突起細胞の活動イメージングを行う。さらに、これまでに見出した新規光遺伝学ツールを用い、能動的回避学習中に見られる小脳ニューロンの活動を、阻害、もしくは促進することで、能動的回避学習において小脳での情報処理が果たす役割を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初の見積もり金額よりも少額分値段が下がった購入備品があった。次年度は計画どおり、VRを用いた実験装置に用いる歯科用ボンド等の消耗品、国際学会参加費、原著論文の公開費用として上記経費を計上する。
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