2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J23885
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山梨 遼太朗 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 直鎖状トリアルマン / オリゴアルマン / カテネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に基づき、配位子L1を用いて環状塩基一配位ボリレンの合成検討を行ったが、目的の環状ボリレンの発生は観測されなかった。しかし配位子L1を用いたルイス塩基安定化中性オキソボランおよびチオボランの合成を行うことができたので、これについての論文をChemistry A European Journal誌に投稿した。そこで環状ボリレンと等電子構造を有するアニオン性アルミニウム化学種であるアルマニルアニオンを用いた新規アルミニウム化学種の合成検討を並行して開始した。 2022年度前半は負電荷を有するアルミニウム-アルミニウム二重結合性化学種であるアニオン性ジアルメンの合成検討を行った。本検討では、アルマニルアニオンとジアルメンの反応により合成を試みたが、それらが低温溶液中で平衡生成物を与えることを明らかにした。この検討はエディンバラ大学のMichael Cowleyグループと共同して行った。 またこの検討の過程で、求核性アルマニルアニオンとアルミニウム求電子剤との反応により3つのアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したトリアルマン化学種が得られることを明らかにした。このような複数のアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したオリゴアルマンはこれまで合成例がなく、その構造的特性や反応性は未解明であった。得られたトリアルマン化学種の反応性や電気化学特性を調査する過程で、一電子還元体を安定に単離できると考え、リチウム金属を用いた還元検討を試みたところ、リチウムを対カチオンに有するアルマニルアニオンが得られた。リチウム金属による還元反応は、ジアルマンでは進行せず、トリアルマンの特徴を反映した反応性であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究課題であった環状ボリレンの合成については、目的としていたボリレンの発生が確認できなかったが、ルイス塩基安定化中性オキソボランおよびチオボランの合成を行うことができた。一方で、求核性アルマニルアニオンを用いた新規アルミニウム化学種の合成と構造解析も行った。これらにより本研究は順調に進んでいると言える。 エディンバラ大学Cowleyグループとの共同研究では、求核性アルマニルアニオンを還元剤に用いたジアルマンおよびジアルメン化学種の新規合成法を見出し、論文として報告するために追加の検討を行っている。アルマニルアニオンとジアルメンの反応によるアニオン性ジアルメン化学種の合成検討では、それら2つの化学種が低温溶液中で平衡生成物を与えることをNMR測定により明らかにした。生成物の単離検討について今後も継続して行うことを計画している。 また求核性アルマニルアニオンとアルミニウム求電子剤との反応により、3つのアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したトリアルマン化学種が得られることを明らかにした。このような複数のアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したオリゴアルマンはこれまで合成例がなく、その構造的特性や反応性は未解明であった。これまでに合成手法の確立と電気化学特性の調査は完了している。一電子還元体の単離を目的として、リチウム金属を用いた還元検討を試みたところ、リチウムを対カチオンに有するアルマニルアニオンが得られた。リチウム金属による還元反応は、ジアルマンでは進行せず、トリアルマンの特徴を反映した反応性であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は直鎖状トリアルマン化学種の反応性の調査に注力していく。現在までにトリアルマン化学種にルイス塩基を添加することでルイス酸-塩基付加体を形成することを単結晶X線構造解析から明らかにしている。ルイス酸-塩基付加体はFrustrated Lewis Pairとして水素や一酸化炭素などの低反応性小分子を活性化できる例が報告されており、トリアルマンをルイス酸とした新規反応開発を行う。また、合成したトリアルマンがエチレンやスチレンのような炭素-炭素二重結合と反応することがNMR測定の結果からわかっており、これら生成物の決定と反応機構解析も行っていく。 さらに4つ以上のアルミニウム原子が連結した直鎖状オリゴアルマンの合成検討も行う。現在までに脱離基としてシリル基およびヒドリドを有するジアルマンをそれぞれ合成している。シランの脱離を伴うアルミニウム-アルミニウム結合の形成反応を利用して、連続した長鎖オリゴアルマンの合成手法の確立を目指す。
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Research Products
(7 results)