2022 Fiscal Year Annual Research Report
受動的刺激から能動的操作感を生起させるVRフレームワークの構築
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22J21664
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中村 純也 豊橋技術科学大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / 歩行 / 全天球動画 / 影 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,低計算機リソースで高いリアリティ・没入感をもつVRフレームワークの構築のために,人の認知特性に介入し,能動的歩行感や運動主体感を創出する手法を提案している。本年度は全天球動画とコンピューターグラフィックス(CG)の融合させた環境を構築し,歩行感や臨場感に与える影響を検討した。 全天球動画は高い写実性を持ち,臨場感の高い体験を得やすい。一方で,動画は収録された媒体であり,自然歩行時に本来あるべき観察者の身体情報を視覚的に認識することができない。以前の研究結果より,バーチャル環境での歩行体験では,自身の身体情報をアバターで提示し,観察することで歩行感を強化可能である。この研究では,現行のヘッドマウントディスプレイ(HMD)の視野角の狭さにより,直接自身の身体を確認するにはHMDを視野の中心に動かす必要があった。そのため,バーチャル環境に鏡を配置し,鏡越しの観察を行った。 一方で,本研究で用いる全天球動画への鏡の合成は不自然な構造物と感じられ,臨場感を損ねる懸念がある。そこで,観察者に自身の身体アバターの存在を認識させるために,影に着目した。関連研究ではアバターを介したコミュニケーションにおいて,影の存在が肯定的な効果を与えることを示しており,影の効果が期待された。そこで本実験では全天球動画へのCGアバターと影の合成を行い,その効果を実験で検討した。実験の結果,影の効果は良好であった。影の効果は歩行感よりも移動感への作用が強く,影の提示が臨場感を強化した。 研究成果は国内学会で発表し,国際誌に論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では全天球動画を使用した時の視触覚や固有受容感覚の信頼性を制御し歩行感覚を強化する方法を開発し検証することであった。 本年度では,計画通りに視触覚の信頼性を高め,歩行感を得るための手法として,自己身体アバターと影による効果を検討するため,実験を行った。研究成果は国内学会や論文投稿を行った。 また,次年度の計画を見据え,固有受容感覚へ着目した実験も実施した。新しい振動刺激装置を開発し,バーチャル環境中の姿勢と実際の観察姿勢が異なる条件下での実験を行った。研究成果は国際会議で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画では,筋や腱への振動負荷による固有受容感覚の信頼性制御を計画している。主として下肢への弱振動を行い,振動刺激の部位・周波数・強度の最適化を行う。また,今年度から観察姿勢へのアプローチも行なっており,次年度計画の実験への導入を検討中である。 また,実験に必要な装置を製作し,研究経過は都度,学会等で発表する。プレスリリースや展示会へのデモ出展を検討し,一般社会への発信や異分野研究者とのコラボレーションを目指す。
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