2020 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物FoF1ATP合成酵素全体の構造解析によるエネルギー変換の原子機構解明
Project/Area Number |
20J40167
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
慈幸 千真理 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / ミトコンドリア / 膜蛋白質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳動物ミトコンドリアのFoF1ATP合成酵素四量体(tetramer)全体を安定化させ、その機能する全長(intactな状態)を高分解能X線結晶構造解析すること、さらには、クライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)を用い、単粒子静的構造解析及び溶液中の本酵素の経時変化(動的立体構造)を明らかにし、本酵素の働きについて、詳細なメカニズムを解明することを目的とする。本研究の成功の鍵は、安定で無傷なFoF1ATP合成酵素を大量に精製できるかである。そこでサブユニットを解離させないために、酵素に負荷のかかるアフィニティカラムを使用しない精製方法を確立することに重点をおいている。申請者は、非常に安定でサブユニット無欠損な本酵素四量体を精製するために、界面活性剤の種類、濃度、遠心時間等の条件を最適化し、カラムフリー精製の分離能を向上させた。安定性と純度の確認には、生物学的検証(クリアネイティブ電気泳動、S D S電気泳動、ウエスタンブロッティング、A T P合成活性測定)と生物物理学的検証(動的光散乱法、試料の負染色による透過型電子顕微鏡による観察)を行った。また従来、ウシ心臓から得られる本酵素を精製してきた。しかしながら、ヒト由来H E K細胞からヒト本酵素四量体を得ることができれば、ヒト疾患のメカニズム解明に直接役立てることができると考え、ヒト本酵素四量体の精製にも挑戦した。その結果、哺乳動物(ウシ、ヒト)ミトコンドリアFoF1ATP合成酵素四量体を精製することに成功し、2021年9月に京都大学から特許出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造解析の成否は安定な試料が得られるか否かにかかっている。その点において、着実に進歩した。
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Strategy for Future Research Activity |
構造解析のステップに入るためには、カラムフリー精製で用いた高濃度のショ糖や、溶液中の不要な遊離界面活性剤の除去、また試料の濃縮を行う必要がある。透析膜を用いてショ糖や遊離界面活性剤の除去などの溶液交換を行ったが、透析中に白濁し沈殿してしまう。したがって、まず、界面活性剤の濃度を検討する。次に白濁は溶解度と関係していると考えられるため、溶液中の塩濃度の検討を行う。高塩濃度では、本酵素四量体に結合している細胞内の活性阻害タンパク質であるI F1を解離することが分かっている。よってI F1結合型本酵素四量体を安定に存在できる最適な塩濃度を決定する必要がある。 また、これまで使用した濃縮膜では、膜に結合したり、分画サイズを本酵素より随分大きくして低速で遠心しても膜を通過してしまった。 よって今後の課題は、溶液交換と濃縮をできる方法を開発することである。
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