2023 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物FoF1ATP合成酵素全体の構造解析によるエネルギー変換の原子機構解明
Project/Area Number |
22KJ1638
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
慈幸 千真理 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / テトラマー / IF1 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物ミトコンドリアFoF1ATP合成酵素によるエネルギー変換メカニズムは、50年以上にもわたって構造解明の取り組みがなされ、クライオ電顕の技術発展によって部分的には明らかになっているものの、本酵素の働きについては、まだ未解明な点が多い。本酵素は柔軟で回転を伴うため著しく不安定であり、これが本酵素全体の均一な精製標品を得ることを難しくしており、このことが構造解析の発展を妨げている。我々は研究進展の鍵を握る試料調製法に重点を置いて取り組んできた結果、牛心筋由来モノマー、ダイマー、テトラマー、オリゴマーをそれぞれ大量に無傷な状態で精製することに成功した(Jiko et al., JBC, 2024)。 またクライオ電顕による高分解構造解析を開始し、多くの問題を解決して、サブユニットを解離させることなく安定に溶液を交換する方法を開発した。現在、内在性阻害蛋白質IF1が結合した本酵素テトラマーは、分解能は部分的に3.6Aまで、モノマーは、部分的に2.2Aまで到達した。 生体膜内で本酵素はオリゴマーを形成する際、機能する最小単位はテトラマーであると考えられているため、テトラマーの構造解析は機能解明や創薬開発のために非常に価値がある。 IF1は、隣り合うダイマー間で結合し、本酵素テトラマー状態を安定化させ、1つのコンフォメーションに固定することが知られている。よって、IF1結合型は、クライオ電顕の構造解析にとって好都合である。通常、IF1は、ATP合成酵素の精製で使用されたカラム樹脂を用いた方法では、簡単に除去されてしまう。しかしながら、我々の開発した精製方法では、カラムを使用していないことに加え、溶液条件を工夫することによって天然のIF1結合型が精製できている。 その結果、研究計画当初は予想もしていなかったIF1結合様式の新規構造解析にも成功した。
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