2021 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアル・環境/動物批評の理論的構築とジョージア近代文学研究
Project/Area Number |
21J00333
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
五月女 颯 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ジョージア / ジョージア文学 / エコクリティシズム / ポストコロニアリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2021年度は、新型コロナウィルス感染症の世界的流行に伴い、予定していた現地での資料調査・文献収集は実現叶わなかった。そのため、理論面での研究を進めることとした。 本研究は、ジョージア近代文学を代表する作家・詩人の作品を対象とするが、両者の作風の違いとして、両者が住み活躍していた地域における「道」(街道)の有無に注目して研究を進めた。新型コロナウィルス感染症という時勢面も意識しつつ、両作家と同時代のロシアやジョージアの詩人・作家における旅行記において描かれるコレラの感染症に注目した。感染症は「接触」によって広がるが、「道」という時空間において人々が偶然に接触するというバフチンの時空間論を参照すれば、そうした「道」の役割が感染症によって具体的に可視化されることが明らかとなった。この内容は、ジョージア文学研究所主催の第15回国際シンポジウム「パンデミックと文学:歴史的・テーマ的経験」(オンライン)で基調講演として発表した。 その他、エコクリティシズム理論の応用として、前年に延期された文学・環境学会東アジア大会(オンライン)で、福島の原子力災害を記録したドキュメンタリー映画監督のエッセイについての発表をした。また、ジョージア文学研究の発展として、日本ロシア文学会第71回全国大会のプレ・シンポジウム「消えゆく記憶とつながり:ソ連崩壊後30年の文学と社会を語る」で、現代ジョージア文学についての口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、新型コロナウィルス感染症の世界的流行のため、予定していた現地での資料調査・文献収集を実施することはできなかった。そのため、その面においては研究の進捗は見られなかった。 その代わり、理論的側面については研究が進捗した。特に、「道」の時空間について、バフチンの論を参照しつつ整理することができたことは、本研究において重要な進捗であると考えられる。よって、進捗については「おおむね順調に進展している」ということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の世界的流行の推移にもよるが、予定していた現地での資料調査・文献収集を行いたい。本研究にかんするジョージア語文献は、日本では大学図書館や国会図書館では所蔵がほとんどなく、現地での調査が必須である。上記の調査に基づいて、具体的な作品分析の作業に移ることを今後の研究課題としたい。
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