2021 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of gravity at the strong-field regime with modified gravity
Project/Area Number |
21J00695
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 一史 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 修正重力理論 / ブラックホール / 摂動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来の重力波の観測によって、一般相対論では説明できないような観測結果が報告される可能性が高いことを考えると、一般相対論を超える重力理論を研究することは喫緊の課題である。このような動機から、これまでさまざまな修正重力理論が提案されてきた。これらの理論はいずれも、計量テンソル以外に新たな自由度を導入することにより、一般相対論を拡張したものと理解することができる。このような修正重力理論において普遍的に成り立つ性質を捉えるべく、計量に加えスカラー場を一つだけ含んだ重力理論であるスカラーテンソル理論が特に詳しく研究されてきた。 スカラーテンソル理論における時空の解は、一般にスカラー場の寄与のため一般相対論における時空とは異なるが、一般相対論と同じ厳密解を持つような理論も存在する。このような解は、背景のレベルで重力理論の修正による寄与が現れないことからステルス解と呼ばれる。一方でステルス解においても、摂動のレベルではスカラー場の影響が現れ、将来の観測により一般相対論との区別が可能となることが期待される。 研究代表者は、ゴーストのない修正重力理論の一般的な枠組みである縮退スカラーテンソル理論に着目し、球対称なステルスブラックホール解に関する摂動論を構築した。同時に、縮退スカラーテンソル理論の範疇では、時空の漸近領域で強結合の問題が不可避的に現れることを明らかにした。この結果は、ステルス解を整合的に記述するためには、さらに拡張された重力理論の枠組みが必要であることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縮退スカラーテンソル理論はゴーストのない修正重力理論の一般的な枠組みであり、この枠組みにおけるステルスブラックホール解が一般に強結合の問題を持つというのは、普遍的かつ強力な結果である。これにより、縮退スカラーテンソル理論はステルス解を整合的に記述する理論的枠組みとしては適切でなく、さらに拡張された重力理論の枠組みを考える必要性が明らかとなった。縮退スカラーテンソル理論の場合における摂動論の定式化は、より広いクラスの重力理論で解析を行う際の重要な手掛かりとなることが期待される。以上のことから、本研究課題は現在までおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
縮退スカラーテンソル理論におけるステルス解まわりの摂動が強結合の問題を持つことを踏まえ、より広いクラスのゴーストのないスカラーテンソル理論、特にU-DHOST理論と呼ばれる枠組みにおけるステルス解の振舞いを調べる。縮退スカラーテンソル理論における強結合の問題は摂動の音速がゼロとなることに起因するが、U-DHOST理論では空間の高階微分項の存在により摂動の分散関係が改善され、同問題が回避可能となる公算が大きい。 今後は、U-DHOST理論におけるステルス解の構築から始め、その解のまわりの摂動を調べる。摂動解析にあたっては、縮退スカラーテンソル理論の場合における摂動論の定式化を応用可能であることが期待されるため、技術的にも大きな困難は生じないと考える。
|
Research Products
(12 results)