2023 Fiscal Year Annual Research Report
重力波天体の長時間活動と中心エンジンによる相対論的インフロー・アウトフロー
Project/Area Number |
22KJ1651
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 渉 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 高エネルギー天体物理 / ガンマ線バースト / マルチメッセンジャー天文学 / 連星中性子星合体 / ブラックホール / パルサー / 高速電波バースト / 高エネルギー天体物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
連星中性子星合体からの重力波GW170817に同期して発見されたkilonovaは、連星合体に伴う放出物質がr過程元素の崩壊熱によって加熱されていることを強く示唆する。連星中性子星合体のシミュレーションによると、放出物質の一部は依然として重力的に束縛されており、しかるのちに合体後の星に向かってfallback accretionしていく。本課題では、r-process元素による加熱がfallback accretionに与える影響を評価すべく、流体計算とその準解析的モデル化をおこなった。その結果、加熱によって質量降着が抑制されることを見出し、降着の抑制が顕著になるタイムスケールを幅広い加熱プロファイルについて求めることができる公式を得た。さらに、GW170817で示唆された年スケールX線光度曲線の超過成分に関する新たな説を提案した。連星中性子星からの放出物質の内、post-merger ejectaと呼ばれる、数秒から数十秒のタイムスケールで放出される物質の一部がfallback accretionすることによって形成される降着円盤が、X線の超過成分を説明しうることを示した。 加えて、連星中性子星合体・ガンマ線バーストのみならず高エネルギー天体物理学一般に重要な課題である強く磁化したプラズマ中のAlfven波の崩壊についての研究も行った。中性子星やブラックホールのようなコンパクト星の周囲に形成される磁気圏は、電磁場のエネルギー密度がプラズマの静止エネルギー密度を凌駕する相対論的磁化率を持ったプラズマであることが期待される。このようなプラズマ中でのAlfven波の安定性を線形解析の範囲で網羅的に調査した結果、(1)崩壊不安定性は相対論的な磁化を帯びたプラズマにおいても生じること、(2)磁化率が大きい極限で、崩壊不安定性が消失することを見出した。
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