2022 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖陸封アユの生活史多型に関与する遺伝基盤と維持機構の解明
Project/Area Number |
21J01519
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 冴月 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 琵琶湖 / アユ / 陸封 / 回遊多型 / 遺伝基盤 / リシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、両側回遊性を持った海アユが琵琶湖へ進出し、気候変動下で回遊型を多様化させた遺伝基盤、そして時空間的に不均質な湖・河川環境における集団内の回遊多型の維持機構を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、昨年度と同じく琵琶湖に流入する規模の異なる4河川(大河川:安曇川・天野川、小河川:和邇川・塩津大川)を調査河川として、海アユと同じように春に琵琶湖から遡上してきた春遡河アユ、および夏中を琵琶湖で過ごし秋の産卵期前に遡上してきた秋遡河アユをそれぞれ30尾捕獲した。各河川・各遡上群について、それぞれ12尾の組織DNAを抽出してリシーケンス解析に供し(計96尾)、回遊型の多様化に関与した遺伝基盤について検討を行った。シーケンス解析では、昨年度に自身が確立したNEB Next UltraⅡ FS DNA Library Prep Kit for Illuminaのキットを用いた改良プロトコルを使用し、従来の1/4程度のコストでリシーケンスライブラリを調整することができた。調整したライブラリについて、Hiseq Xによるシーケンスを行ったところ、全個体からゲノムサイズの×7~16のカバレッジで良好なゲノムシーケンスデータを得ることができた。新たに得られたシーケンスデータをリファレンスゲノム上にマッピングし、昨年度取得済みのデータ(96尾ぶん)と合わせて、回遊型間で顕著な頻度差・分化を示す一塩基多型(SNP)をゲノムワイドに探索した。その結果、いくつかのSNPが候補として選択された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、前年に引き続き計画していた全てのサンプリングとリシーケンス解析のプロトコル検討および技術習得を滞りなく進めることができた。現在までに、回遊型の異なる琵琶湖陸封アユ集団内の2群間(春遡河群および秋遡河群)で統計的に有意な分化を示すSNPの候補が複数見つかっているほか、琵琶湖内で地理的に遺伝的構造の異なる群に分けられる可能性が浮上してきている。そのため、研究全体として「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、4本の調査河川において春遡河アユおよび秋遡河アユをそれぞれ捕獲し、リシーケンス解析に供する(3年目サンプル)。3年間のリシーケンスデータを比較し、共通するSNPに回遊型間で顕著な頻度差・分化がみられるかを検討する。さらに、回遊多型の維持機構について検討するため、産卵期には精子由来の環境DNAを選択的に収集・モニタリングし、回遊型間で違いの見られたSNPの頻度が時空間的に変化するかを調べる。
|