2021 Fiscal Year Annual Research Report
ベイズ推定に基づく断層物理モデリングの新手法の確立、実地震の破壊停止の力学の解明
Project/Area Number |
21J01694
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 大祐 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 断層摩擦 / 震源インバージョン / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要課題は、断層の摩擦応力状態とその合理的空間解像度の同時推定である。断層面の摩擦法則を境界条件とする物理シミュレーション単体では摩擦応力状態の空間解像度を客観的に定められないが、断層滑りの推定で発展してきたベイズ逆解析の手法を組み合わせることで空間解像度もまた推定量とできる。手法開発過程で、特に断層の摩擦状態であるスティック・クリープと経年応力蓄積を静弾性逆問題を経由して推定できる事を発見した。手法は多次元モンテカルロ法と呼ばれる比較的高コストな計算手法を内蔵するが、弾性力学平衡条件をモデル方程式とする逆問題であるため簡易的かつ安定な推定が可能と期待される。さらにベンチマーク問題で手法の性能を評価するとともに応用の準備を進めた。
本研究に関連して、空間解像度を事前情報の超パラメターとするベイズ推定において、合理的解像度を与える統計規準と空間解像度無限小の規準とに推定法が漸近的に二分されることを理論的に発見した。この結果を論文としてまとめ、現在Geophysical Journal International誌に投稿中である(Sato, Fukahata & Nozue, 投稿中)。同研究内容で今年度に招待講演二件を受けた。さらに、赤池ベイズ情報量規準を用いた超パラメター推定が真値を確率1で推定できるという発見もあり、論文の投稿準備を進めている(Sato & Fukahata, 投稿準備中)。加えて、定期的に若手研究者間で断層滑りインバージョン研究集会を共同開催しており、こちらは次年度の東京大学地震研究所共同利用採択集会に発展した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
問題設定の易化に関連して、当初予定されていた動弾性逆問題を実装しなかった一方で、当年度の目的である断層摩擦応力状態の空間分布を安定に求めるベイズ推定法の実装を遂行できているため。超パラメター推定に関する経験ベイズ法の一致性という思わぬ発見もあり、当初の動機を上回るレベルで従来手法との比較検証が可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに得られた手法は、従来測地学的に推定されてきた沈み込み速度の空間不均一(見かけの固着)と摩擦的な降伏状態(真の固着)を峻別できる。20011年東北沖地震では地震前後で見かけの固着が変化したことが先行研究から明らかになっており、室内実験からは時間不変と考えられる断層の摩擦的安定性(固着特性)との食い違いが明らかになっていた。本手法の応用として、見かけの固着と真の固着の分離という観点から、このパラドクスを再検討することを考える。余効滑りに手法を適用して地震後の固着回復過程を調べることで、断層破壊停止に関する情報抽出も期待できる。今後は、手法のベンチマークとデータ処理を固め、さらに手法応用によって実断層の摩擦応力状態に関して知見を深める。
|