2021 Fiscal Year Annual Research Report
非摂動的量子色力学の本質的自由度の抽出と有効模型の構築
Project/Area Number |
21J20089
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大畑 宏樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 量子色力学 / 強結合 / 強い相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず,カイラル対称性の破れのオーダーパラメータであるカイラル凝縮と,モノポールやカラー磁場との局所的相関についての研究を行った.擬熱浴法を用いて作られたゲージ配位に対して,最大可換ゲージを用いた可換射影をすることで得られる配位を統計的に解析することで,カイラル凝縮とカラー磁場の間に,およそ0.8の相関係数で特徴づけられる強い局所的相関があることがわかった.また,これらの局所的相関をより明瞭に観察するために,静的なモノポール・アンチモノポール対がある距離だけ離れて存在する人工的なゲージ配位を生成した.このゲージ配位においてカラー磁場は,モノポールとアンチモノポールの間に直線的に局在しており,カイラル凝縮もこれに沿って局在していることが明らかになった.これらの結果はいずれもカイラル凝縮とカラー磁場とのより直接的な相関を示唆している.これらの結果のmagnetic catalysisによる解釈を行い,原著査読論文として発表した. また,Coulombゲージ固定された量子色力学の低エネルギー領域において重要な寄与をすると考えられている,Faddeev-Popov (FP)演算子のlow-lyingな固有モードに着目した研究を始めた.FP演算子の固有モードによるゲージ配位の全く新しい射影法を考案し,ハドロンの質量への適用を行った.僅か5%程度のFP演算子のlow-lying固有モードのみを残した射影で,これらの物理量がほぼ保たれるという結果を得た. また,低エネルギー領域での強い相互作用の重要な現象を保つ可換配位を直接的に生成するという目的の最初の一歩として,U(1)^{N-1}ゲージ理論のゲージ配位を,擬熱浴法およびhybrid Monte Carlo法を用いて生成するコードを制作した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一の目標は非摂動的量子色力学の本質的な自由度を抽出することである.可換射影による本質的自由度の抽出では,クォークの閉じ込めの発現機構として双対超伝導描像があることが知られている.一方で,このアプローチにおける,カイラル対称性の自発的破れの発現機構は知られていなかった.我々はカイラル対称性の自発的破れの発現機構として,magnetic catalysisという新しい描像を提示することに成功した. また本研究課題の第二の目標である,有効模型の構築の第一のステップとして,U(1)^{N-1}ゲージ理論のゲージ配位を,擬熱浴法およびhybrid Monte Carlo法を用いて生成するコードの作成にも成功した.擬熱浴法を用いる場合,現状では最小の正方形からなる作用にしか対応していないためさらなる発展が必要ではあるが,第二の目標達成のための最初の重要なステップが部分的に完了したと言える. さらに,可換射影とは別のアプローチである,Coulombゲージ下の量子色力学のFaddeev-Popov演算子に着目した研究もはじめ,すでに興味深い成果を得ている.これらを総合すると,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず,Coulombゲージ下の量子色力学のFadeev-Popov演算子に着目した研究を進める.具体的には構成子クォーク質量の測定,より精度の高い数値計算,および,特にクォーク模型という観点からの数値計算結果の解釈を進め,論文の執筆を行う. また,U(1)^{N-1}ゲージ理論のゲージ配位を熱浴法により生成するコードの,1 x 2の長方形を含む作用への拡張を行う.長方形を含む作用での擬熱浴法を並列計算で効率的に行うためには,最小の正方形のみを含む作用の場合より幾分複雑な4次元時空上の格子点の分割を行う必要がある.SU(N)ゲージ理論の場合の既存のコードを参考に,効率性に最大限の注意を払いつつコードの実装を行う.その後,このコードを用いて様々な結合定数の値での,クォーク閉じ込め力,クォーク凝縮,ハドロンの質量などを調べ,通常の格子量子色力学シミュレーションで得られる値との比較を行う.また,格子量子色力学のゲージ配位を最大可換ゲージを用いて可換射影して得られるゲージ配位との比較も行う予定である.
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