2023 Fiscal Year Annual Research Report
非摂動的量子色力学の本質的自由度の抽出と有効模型の構築
Project/Area Number |
22KJ1662
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大畑 宏樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 閉じ込め / 符号問題 / モンテカルロ計算 / シータ項 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、シュウィンガー模型におけるシータ項に伴う符号問題を、ボソン化法を用いて回避するという新しい数値計算手法の確立を行った。具体的には、ボソン化されたシュウィンガー模型の格子ユークリッド作用を導出し、この格子作用からカイラル凝縮が正しく計算されることを解析的および数値的に実証した。また、この手法を用いて、有限温度・有限シータ領域での閉じ込めの様相を定量的に明らかにした。これらの結果を原著論文としてまとめ、JHEPから出版した。さらに、シュウィンガー模型と異なり可解な模型である、量子イジング模型におけるスピン・スピン相関関数の解析型が、シュウィンガー模型の電場の相関関数にも現れることを第一原理計算で示した。これにより、量子臨界点近傍でのシュウィンガー模型の相構造が量子イジング鎖と全く同じであることがわかり、さらに電場と相関長の臨界点近傍での振る舞いも定量的に明らかとなった。これらの結果を原著論文としてまとめ、PTEPから出版した。また、量子色力学における閉じ込め転移に関する研究も共同で行った。 本研究課題の当初の目的は、量子色力学の可換な自由度に着目した新たな有効模型を構築することであった。結果的には、研究期間の中期より、量子色力学のトイモデルとして1970年代から知られているシュウィンガー模型に着目した研究を行うこととなった。これは大きな研究の方向性の転換であったが、トイモデルにおいてであるとはいえ、シータ真空に関する新たな解析手法の確立に成功し、さらにその手法を用いて新たな知見の獲得に成功した意義は大きい。この知見はシータ項に関する基本的な理解を深め、将来的には量子色力学におけるシータ真空の理解にも寄与すると期待できる。
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