2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世社会における「隠居大名」の政治的位置の形成と変遷
Project/Area Number |
22KJ1673
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安岡 達仁 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 近世大名 / 土佐山内家 / 山内康豊 / 発給文書 / 大名家御殿 / 幕藩関係 / 政治構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、隠居大名に注目しつつ、近世初前期の大名家成立過程の解明を図ることを目的とする。最終年度の令和5年度は、これまでの成果を文章化し、論点の整理と深化を図りつつ、これまで成果からの大枠の提示を意識した研究活動を実施した。①近世初期に「隠居」として主要な政治的位置を占めた山内康豊の発給文書の整理・分析を進めた。②土佐藩領内の御殿の分布を整理・分析を進めた。康豊発給文書等の一次史料と地誌などの史料を複合的に用いて、空間的視点を踏まえて考察した。③これまでの研究を整理する中で今後山内家から近世成立期を考える上で重要な人物を設定した。 以上の研究を通じて、近世前期の大名家、特に土佐山内家に関して以下の知見を得た。 ①年代未比定が大多数であった360点余りの文書の年代比定を行った。慶長~元和期にかけて、康豊は藩主実父の立場に由来する権威・権力を保持し、藩主忠義と両輪となって藩政を運営していた。また度々上方や江戸に参府し将軍家に御目見し、縁戚大名と交際するなど、山内家の対外関係の構築にも寄与していた。作成した文書目録は、大名家史料から再検討が進む幕藩政治史研究にも還元できる成果である。②近世前期の土佐藩領では、地域別に異なる利用契機を持つ御殿が全藩規模の藩主の移動を支えていたが、17世紀後半を境として、御殿が全藩的に経営される時代から高知城以東の御殿が維持される時代へ移り変わった。大名家御殿の存在形態は、求められる機能、その土地の歴史性や領地内の空間的特徴が影響していた。③康豊の江戸参府時に幕閣との仲介を行った池田輝政は豊臣政権時からの政治的位置によって、慶長期の西国大名と幕府の関係を仲立ちした。また関ヶ原合戦に際して江戸へ人質として赴き、江戸から土佐へ移ったのち康豊の後を継いで幡多郡中村を領した良豊が当該期期の山内家で重要な位置を占めていた。彼らの歴史的位置を追究する必要がある。
|